弁護士

弁護士の仕事

弁護士は高度な法律知識を有する専門家です。さまざまな事件やトラブルに対して適切な対処方法や解決策をアドバイスしたり、争いごとを未然に防ぐための予防方法を提示したりと、「社会生活における医師」として活動しています。

弁護士の仕事でイメージしやすいのは、争いごとの解決でしょう。弁護士が扱う事件は、大きく民事事件と刑事事件に分けることができます。

民事事件とは、人と人、会社と会社、人と会社など、生活上でのトラブルです。例えば交通事故や離婚問題といった、人対人の和解・示談交渉。会社対会社では商取引上トラブルの対応。人対会社の場合なら、不当解雇や賃金未払いに対する訴訟など、生活の中で起こるさまざまな争いが対象です。

争いを当事者同士で解決することも、もちろんできます。しかし、問題がこじれてしまって当事者では解決できない場合は、プロの法律家である弁護士が代理人として解決に導く役割を担います。民事事件において弁護士は、法的見地から依頼人の権利を守ることが役目となります。
もう一方の刑事事件とは、人が起こした犯罪について、どのような刑罰を科すかを問題にする手続きです。犯罪が疑われる人と検察官が当事者になるのが、民事事件とは異なる点です。刑事事件での弁護士の活動は、犯罪が疑われる人の人権を守ることに集約されます。具体的には、冤罪の防止や、過度な刑罰が課されることを防ぐ役割があります。

また、弁護士の仕事は争いへの対応だけではありません。争いが起きていなくても、個人や会社から法律に関する相談をさまざま受けることがあります。例えば個人からは、遺産相続に関する相談や労働環境に関する相談、借金に関する相談など。法人からは、合併や買収に関する相談、契約書に関する相談など非常に多岐にわたります。

さらに、近年企業では、トラブル防止を目的とした「予防法務」に取り組む必要性が認識されています。それをサポートするため弁護士は、契約書類及び社内規則の見直しや新規作成、社員向けコンプライアンス研修を実施する取組みにも貢献しています。

弁護士になるには?

弁護士になるためには、3つのステップを踏む必要があります。

①法科大学院に入学し、3年間もしくは2年間学ぶ。

法科大学院はロースクールと呼ばれることもあり、法律の学修をしたことがない人を対象とする3年間の法学未修者コースと、法律の基礎知識をすでに有している人を対象とする2年間の法学既修者コースが用意されています。まずは法科大学院で学び、修了することが必要です。

時間的な制約や経済的な事情で法科大学院に通えない場合は、代わりに予備試験を受験する方法も選択できます。予備試験は年に一度短答式試験・論文式試験・口述試験の順で実施され、それぞれ合格すると次の試験を受験することが可能です。ただし、予備試験は法科大学院終了レベルの力の有無を測るものになっており、同じ年に3つすべての試験に合格する必要がありますので難易度は高くなっています。

また、2020年より大学の学部段階で、3年での早期卒業が可能な法曹コースが開設されています。同コースを卒業して法科大学院既修者コースへの進学が可能です。

②司法試験に合格する

①のステップをクリアすると、司法試験の受験資格が得られます。なお、2023年からは法科大学院の修了前(最終学年)でも受験ができるようになります。

③司法修習(研修)を受ける

②のステップをクリアすると、1年間の司法修習を受けることになります。なお、②の司法試験を法科大学院の修了前に合格した場合であっても、法科大学院を修了しなければ、司法修習に進めません。そして、研修後の試験(司法修習生考試)に合格すると、弁護士になる資格が与えられます。裁判官や検察官を志す場合も同じステップで資格を得て、司法修習の間に本人の特性や希望により法曹三者のいずれに進むかが決まります。

必要な資格

弁護士として働くためには、法曹資格を取得する必要があります。上で述べたとおり3つのステップを経る必要がありますが、ここでは予備試験・司法試験・司法修習生考試について詳しくご説明します。

①予備試験

予備試験は受験資格がありませんので、誰でも受験が可能です。短答式試験は5月中旬、論文式試験は7月中旬、口述試験は10月下旬にそれぞれ実施されますが、2023年より短答式試験が7月中旬、論文式試験は9月上旬、口述試験は翌年1月中~下旬の実施に変更となります。

当年度の間に3つの試験をすべて合格しなければならず、翌年度に持ち越すことができません。最終合格率は、3~4%となっています。

②司法試験

司法試験は、法科大学院の修了者(2023年度からは法科大学院の最終学年での受験も可)と予備試験合格者のみに受験資格が与えられます。毎年1回、5月中旬に論文式試験と短答式試験が4日にかけて行なわれますが、2023年より7月中旬に変更となります。

不合格となった場合でも翌年チャレンジできますが、受験資格を得てから5年以内に合格できなかった場合は、受験資格が失効してしまいます。もし失効して再度司法試験の受験を希望する場合は、再度法科大学院を修了するか予備試験に合格しなければいけません。

2022年現在、過去5年間の合格者数は1400~1500人/年となっていますが、合格率としては25~40%と年によって差があります。

③司法修習生考試

司法修習の卒業試験として、丸一日を使って一科目ずつ、計5日間の試験です。

大変な試験ではありますが、合格率は約99%と高く、ここまで積み重ねてきた知識を活かせば合格できる可能性は高いでしょう。

専門的な学校・学科はあるの?

大学の法学部や法律の知識を教えてくれる専門学校は数多くありますが、法曹(弁護士・検察官・裁判官)を目指すなら法科大学院以外はありません。

法学院は、法曹に必要な学識・能力を培う目的に特化した日本の専門職大学院です。法科大学院を修了した者のみ新司法試験の受験資格が与えられるので、弁護士を目指すなら選択肢は法科大学院だけになります。

2022年時点で全国の国公立・私立大学で70を超す法科大学院があり、中には夜間コースを設置する法科大学院もあります。

弁護士を目指すために、誰もが受験可能な予備試験がありますが、相当難易度が高く法科大学院の代替え手段とは言い難い難関です。

やはり、弁護士を目指す人にとっては、法科大学院が選択肢になります。

弁護士の年収・給与・収入

2020年に日本弁護士連合会がおこなった調査によると、弁護士の年収は平均値が2,558万円、中央値が1,437万円となっています。これだけを聞くと高収入に感じられるかもしれません。しかし、10年前の同じ調査では平均値が3,304万円、中央値が2,112万円と、大幅に減少しているのです。これは、2006年より新司法試験制度が導入され、弁護士人口が2010年時点で29,000人だったのが、2021年時点では約43,0000人と1.5倍に増加していることが影響していると考えられます。

また、弁護士人口が増加したことにより、大手の弁護士事務所に就職できず、企業内弁護士として一般企業に就職する人も年々増加しています。一般企業に就職する場合、弁護士資格を有していても他の社員と同様の給与体系であることも多いため、それも年収が減少している要因の一つでしょう。

弁護士の社会のニーズ・将来性・まとめ

弁護士は法律の専門家として、多岐にわたる法的サービスを提供できます。また、一般企業がコンプライアンスやSDGsなどを意識するようになったことから、今後も企業からの高いニーズが見込めるでしょう。

もちろん、AIやICTに代替される業務も少なからずあると思われますが、逆に新しい事業やサービスの出現、社会情勢の変化により、新たな仕事が生まれる可能性も多いにあり、弁護士の需要は続くと考えられます。

ただし、弁護士の増加により、資格さえ取得すれば安泰という状況ではありません。弁護士の働き方も多様化していく中で、自分自身がどのような弁護士として社会に貢献したいのかをよく考え、就職先や専門分野を決めることが重要です。

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