司法書士

司法書士の仕事

司法書士は、個人や法人から依頼を受けて、裁判所や法務局に提出する法律の書類を作成する職業であり、国家資格の取得が必要です。

司法書士の仕事のなかで最も多いのが、「登記手続き」です。登記には、不動産登記と商業登記があります。不動産登記は、家や土地などの不動産を取得したときなどに対応が必要になるもので、土地や建物が自分のものであることを証明する制度です。一方、商業登記は株式会社などの会社の社名や役員情報、資本金、会社の目的などを示すもので、株式会社を設立するときには必須の手続きです。どちらも提出しなければいけない書類が多いため、司法書士への依頼が多くなります。

また、法務省などへの供託手続きも司法書士が担います。例えば、借りている家の大家さんが亡くなり、誰が相続するのかわからず支払い先が不明なときに、家賃を法務省に支払うことで、家賃の支払いがなされたとみなすための手続きがこれに含まれます。供託所に出向いたり、契約書をもとに申請書を作成したりする必要がありますので、供託も司法書士が対応するケースが多くなっているのです。

さらに、日本司法書士会連合会が実施する研修を受講するなど一定の要件を満たすと「認定司法書士」となることができ、請求額が140万円までのトラブルに対応が可能です。弁護士と同じように裁判所に出向き、裁判の代理人、また相手との交渉や示談などさまざまな支援を行なうことができます。

司法書士になるには?

司法書士になるためには、2つの方法があります。

①司法書士試験に合格すること

②裁判所事務官・裁判所書記官・法務事務官・検察事務官として10年以上従事、または簡易裁判所判事・副検事として5年以上従事し、口述試験などにより法務大臣の認定を受けること

ただし、②は定年退職した方が利用する制度となりますので、①の方法が一般的です。

さらに、司法書士試験に合格したあとには、日本司法書士会連合会や各司法書士会などが主催する新人研修を受講し、日本司法書士連合会に登録しなければなりません。

司法書士試験は、学歴や年齢、国籍などに関係なく誰でも受験が可能となっています。試験は毎年1回のみで、7月上旬に筆記試験、筆記試験の合格者のみ10月中旬に口述試験が実施されます。筆記試験は9:30~16:30とかなり長く、合格最低点と基準点の両方をクリアしなければいけないなど難易度はかなり高めです。なお、口述試験は合格率がほぼ100%となるため、筆記試験に合格できれば間違いなく合格できるでしょう。

試験会場は筆記試験が16ヶ所(東京、横浜、さいたま、千葉、静岡、大阪、京都、神戸、名古屋、広島、福岡、那覇、仙台、札幌、高松)、口述試験は高等裁判所が置かれている8ヶ所(東京、大阪、名古屋、広島、福岡、仙台、札幌、高松)のみとなっています。受験手数料は8,000円です。

2022年現在、過去5年間における合格率は4~5%となっていますので、文系の国家資格のなかでも最難関資格の一つとなっています。

必要な資格(いる場合)

司法書士試験を受ける方法であれば、学歴や年齢、国籍などが問われませんので、誰でも受験が可能です。2021年度の合格者の最年少は21歳、最年長は77歳と、幅広い世代がチャレンジする試験となります。合格者の平均年齢は41.79歳で、合格者の6割を占めるのが30代~40代となっています。

専門的な学校・学科はあるの?

司法書士に特化した専門的な学校はありません。筆記試験は11科目すべてが法令に関する問題となっていることから、大学の法学部や法学が学べる学校への進学が一般的でしょう。

11科目のうち、民法・商法(会社法)・不動産登記法・商業登記法が配点が高い主要4科目とされ、その他の7科目(民事訴訟法・民事保全法・民事執行法・司法書士法・供託法・憲法・刑法)がマイナー科目といわれています。ただ、マイナー科目だから勉強しなくても良いわけではありません。午前・午後それぞれの択一問題、午後の記述問題それぞれにボーダーライン(基準点)が設けられていることから、すべての分野を勉強する必要があります。

参考書を利用した独学での受験も可能ですが、司法試験の学習時間は通常3,000時間前後、短い人でも約2,000時間必要だといわれていますので、独学での合格はかなり困難とされています。1年間に2,000時間と考えても、一日あたり5~6時間です。合格者の平均年齢が30~40代であることを考えれば、仕事をしながら勉強している人が多いと推測できますが、年単位でこのスケジュールをこなすのは難しいでしょう。そのため、通信講座の受講やスクールへの通学なども選択肢に入れる必要があります。

司法書士の年収・給与・収入

司法書士の平均的な年収は約681万円とされていますが、働き方や経験年数により大きく変わります。

司法書士の勤務形態はさまざまで、企業や司法書士事務所などで雇用されて働く場合は年収が低く、自分で開業する場合には年収が高くなる傾向にあります。雇用されて働くいわゆる「勤務司法書士」の場合、年収300~600万円未満が全体の54.3%を占めており、年収1,000万円以上は、2.9%とほんのわずかです。一方で開業司法書士の場合、年収1,000万円以上は全体の38.9%と、勤務司法書士とはかなりの差があります。

もちろん、開業しただけで年収1,000万円以上になるわけではありません。全国に20,000人を超える司法書士がいますので、新規に開業したときには、営業力や相談に親身に答えるコミュニケーション力が必要となるでしょう。

また、仕事の幅を広げたり、年収を上げたりするためには別の資格を取得するのも効果的です。例えば行政書士と兼業をすることで、国や地方公共団体などの官公署に提出する書類の作成も引き受けることができることから、作成できる書類や対応できる仕事の幅を広げることができます。ほかにも司法書士は不動産登記の仕事ができますので、不動産取引の専門家である宅地建物取引士と兼業すれば、不動産取引を一貫して対応可能です。

司法書士の社会のニーズ・将来性・まとめ

行政手続きの簡素化・効率化が推進されていますので、今後、個人や法人が司法書士に頼まなくても自ら申請できるようになったり、AIにより対応できるようになったりするなど、司法書士が取り扱う業務が減るリスクが考えられます。

その一方で、司法書士がさらに活躍できる場が広がっていますので、新たなニーズも生まれるでしょう。例えば、2021年に空き家・所有者不明土地問題に対応するために法律が改正され、これまで任意とされていた相続登記や住所等変更登記の申請が義務化されることになりました。不動産登記は司法書士が多く扱う仕事の一つとなっており、さらに依頼が増えることが想定されます。

また、長寿高齢化がますます進んでいくことが予想され、それにともなう依頼もさらに増えると考えられます。具体的には、成年後見に関する業務や民事信託などです。成年後見制度は認知症などにより判断能力が低下した方を保護する制度で、司法書士が後見人となり財産を管理します。日本における65歳以上の認知症の人の数は、2025年には約700万人(高齢者の約5人に1人)といわれていることから、需要はますます増えるでしょう。また、認知症になる前に、財産を家族などに託して管理、運用などをしてもらう民事信託の制度の需要も高まると考えられます。

社会のニーズに合わせて対応していけるかどうかが、司法書士として活躍できるのかのポイントになるでしょう。

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