消防官とは、災害現場で消火や危険の排除、人命救助を行なう職業です。
私たちの生活の安全が脅かされたときに守ってくれる消防官ですが、具体的な仕事内容を説明できる方は少ないのではないでしょうか。
何か大きなけがや事故が起きない限り消防官に会う機会がないので、仕方のないことかもしれません。ここでは、私たちを守ってくれる消防官の仕事内容やなり方を紹介していきます。
人を助けたい気持ちがある方や社会の安全を守りたい方は、この記事を就職先や学校選びの参考にしていただければと思います。
消防官の仕事
消防官は、どのような仕事をしているのでしょうか。
「火事のときに消火する」というおおまかなイメージをしている方が多いでしょう。
ここでは、消防官の業務内容と所属を紹介します。
消防官の所属部隊は、以下の3つの専門部隊に分かれています。
【消防官の所属部隊】
①消防隊
おもに火災現場で救助をする部隊です。
ポンプ車で現場に向かい、初期消火や人命救助、危険物の除去を行ないます。
また管轄する地域の地理や消防水利の位置の確認、建物の現地調査や火災防御訓練などを行ない、災害に備えています。
②救急隊
救急車による搬送部隊です。
救急車で現場に向かい、病人や怪我人に応急処置を施して医療機関へ搬送します。
救急隊員は、応急処置の知識や技術を高めるため、各種研修や高度化された資材や救急機器の取扱訓練を行なっています。
③救助隊(レスキュー隊)
火災や交通事故、自然災害などに巻き込まれた人の救出活動を行なう部隊です。
あらゆる事故現場に対応できるよう、山岳救助隊や水難救助隊など、より細分化された部隊が設けられていることもあります。
【消防官の業務内容】
基本的に所属部隊に対応した業務を行ないますが、以下は共通業務です。
・火災などを未然に防ぐ予防・防災活動
火災原因の調査の実施と調査結果の行政への反映のほか、正しい防火・防災対策がされているか建物や消火設備の検査を行ない、必要に応じて指導をします。
また、地域の防災計画の立案や火災予防の意識を深めるための啓発活動や防災活動も行なっています。
消防官になるには?
消防官になるには、各自治体の採用試験の合格と消防学校への入学が必要です。
【各自治体の採用試験の合格】
地方公務員としての採用になるため、各自治体の採用試験に合格しないといけません。
受験資格と試験内容、日程、難易度は、各自治体によって違います。そのため複数の自治体の採用試験を受けること(併願)も可能です。
本命の消防本部がなければ、複数の採用試験を受験するのが合格への近道でしょう。
【消防学校入学】
採用試験に合格すると、採用候補者名簿に記載され、各都道府県や政令指定都市に設置されている全寮制の消防学校に6ヵ月~1年間入学します。
消防大学在籍中は、採用試験合格後の地方公務員であるため、給与や各種手当が支給されます。
以下は新人教育のための研修カリキュラムの例です。
【初任科教養】
消防業務実施上必要となる座学
地方公務員として必要となる座学
体力錬成
消火作業に必要となる資材や機器の取扱訓練
消火活動訓練
心肺蘇生法など
卒業後は、自分の所属する消防本部に戻り、消防業務、救急業務、救助業務などに就きます。
必要な資格
採用試験の受験資格はありません。
ただし、業務上必要な自動車運転免許は、取得が必要です。
大型や中型の免許が必要な場合もありますが、普通運転免許で運転できる消防車両もあるため問題ありません。
また救急隊や救助隊への所属を目指す場合は、救急救命士の取得が必要です。
資格取得の難易度や勉強時間を考えると、消防官採用試験を受験する前に救急救命士の資格を取得するほうがよいでしょう。
専門的な学校・学科はあるの?
消防官を目指せる大学・学科は、残念ながらありません。
しかし、専門学校で検索すると、多くの学校がヒットします。
基本的に筆記試験対策の学科やコースが中心ですが、なかには、実技試験用に体力向上ができる授業が用意されていることもあります。
これらの学校は、消防官の試験内容に特化しているため、本気で消防官を目指すのであればおすすめです。
消防官の年収・給与・収入
消防官は、救助や救急など命に関わる責任のある仕事です。
そのためどのぐらいの年収なのかなど収入が気になるかと思います。
結論からいうと消防官の平均給与額は、約40万円です。
他の地方公務員の給与と比較しても多くはありませんが、安定しています。
内訳として平均給料月額が約30万円、諸手当月額が約10万円です。
消防官は、危険をともなうことや24時間勤務など、ほかの公務員と違って特殊な勤務体系です。そのため消防官だけの特殊勤務手当が設けられ、諸手当月額が平均給与の4分の1を占めます。
〇消防官特殊勤務手当
消防活動従事の際の出勤手当
急病人などを救急搬送した際の救急手当
深夜特殊勤務手当
それぞれ一回数百円程度の金額ですが、出勤などを繰り返すことで金額が増えていきます。
危険をともなう仕事で月額約40万円の収入をどう思うかは、人それぞれですが、収入だけがすべてではありません。
私は、消防官は人を助ける責任ある仕事だと思います。
収入以外の部分をモチベーションにしてもよいのではないでしょうか。
消防官の社会のニーズ・将来性・まとめ
【消防官の将来性・ニーズ】
人々を助ける仕事をする消防官ですが、将来性やニーズはあるのでしょうか。
火災や地震、風水害などは、いつでも発生する可能性があるので、今後も社会的に求められる仕事です。
近年では、火事現場での状況把握にドローンを利用するなど新技術も生まれているため、ドローン操縦士のように特定の分野に特化した人材が求められるでしょう。
これから消防官を目指すうえでは、何かに特化した技術を身に付けるのも、消防官になるための道につながるかもしれません。
【消防官の課題】
消防官には、課題とされていることがあります。
①ドローン操縦者不足
災害現場での状況把握のためにドローンが使用されています。
状況把握がしっかりできることは、消防官自身の安全確保につながる有用な方法です。
ドローンを保有している消防本部は年々増えているため、今後消防官として求められるスキルになると考えられます。
しかし現在、ドローン操縦ができる人材は消防官のなかにはあまりいません。
保有しているドローンを活かせる人材が求められていくでしょう。
②女性消防官が少ない
消防官は、一般企業と比較して女性の割合が少ない職業です。
以前に比べると、女性消防官は増えていますが、男性消防官の数と比較すれば少数派に変わりありません。
女性消防官が増えているためか、女性消防官向けの改装を実施している消防署も出てきているので、今後、女性が働きやすい環境が整えられていくかもしれません。
③高齢化やグローバル化
これまでの日本は、高齢化社会や社会のグローバル化への対応ができていませんでした。
身体を動かすことが難しい高齢者や日本語がわからない外国人を、どのように誘導・補助していくのかをこれから考えていく時代になっています。
少子高齢化の問題は年々加速していくことから、消防官も社会の変化に合わせた姿に変わることを求められるでしょう。
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