本や物語が好きな人にとって、小説家という職業は憧れの存在かもしれません。現在は従来の紙の本だけでなく、電子書籍やスマートフォンで読む小説など、小説の媒体も幅広く、小説家の活躍の場は広がっています。
しかし、小説家の仕事内容についてはあまり知られておらず、小説家として世に出ていく方法も、はっきりわからないという人が多いでしょう。実際、小説家になるための絶対的なルールなどはなく、さまざまな経歴を持った人が、多彩な作品を世に送り出しています。
そのような自由な背景が、個々の作品の魅力を形作っているともいえますが、ここでは小説家の仕事の中身や、小説家としてデビューするための方法について紐解いていきたいと思います。
小説家の仕事
小説やエッセイ、ノンフィクション、評論文など、文章を作品化し収入を得る職業を総称して作家と呼びます。小説家は作家のなかでもおもに物語を描く仕事を指し、古くから多くの作品が執筆されてきました。
さらに小説は細分化され、おもに純文学とエンターテインメント系に分けられます。そのエンターテインメント系のなかにも、恋愛、SF、歴史などさまざまなジャンルが存在します。ほかにもライトノベルなど特殊なジャンルも存在し、一言で小説家といってもあらゆる作家が対象となります。
ちなみに物語を作成するという面では、テレビ番組やドラマの脚本なども含まれますが、それらの職業は構成作家、シナリオライターなどと呼ばれ、文章で物語を紡ぐ作家、小説家とは区別されます。
小説家の活躍の舞台は、以前は単行本や雑誌、新聞などの媒体がメインでしたが、現在はインターネット上やスマートフォンの配信、SNSなどでも作品が読まれることが多く、その活躍の場は広がっています。なお、単行本には何かの媒体で発表されたものをまとめる場合と、一から書き下ろされるパターンがあります。
小説家になるために決まった方法や、資格などは必要ありません。自身の表現したい世界感、物語、人物描写やプロットなどがあることに加え、それを正確に読者に伝わる文章にまとめ上げる能力があれば、誰でも小説家になるチャンスはあります。
文壇にはいくつかの新人賞が存在し、そこで作品が認められ、作家としてデビューすることは多いです。ただし、それ以外の方法でも読者からの支持を得て、それを商品化し収入を得ていれば小説家といえます。
なお、作品に関する収入は大きく分けて、作品発表時点で得られる原稿料と、単行本が売れた場合に支払われる印税があります。多くの小説家志望者が小説家だけの収入で生活することを夢見ていますが、継続的に人気を獲得できるのはほんの一握りなのが事実です。
有名小説家になれば、小説の執筆以外にも講演会や、ファンとの交流会、芸能活動など多くの活躍の舞台が開けることもあります。また別の職業を持ちながら、小説家として執筆する人も多く、専業ばかりが小説家の姿ではありません。
そもそも小説家に決まったスタイルはなく、その執筆の方法もさまざまです。昼間に執筆する小説家や、夜通し書き続ける小説家など、さまざまな仕事の形があり、決まった生活パターンがあるわけではありません。
作品発表の頻度も決まった型はなく、数年に1作書き上げる小説家や、コンスタントに作品を発表し続ける小説家もいます。
このように一言で小説家といってもその書く内容や、書き方、執筆スタイルや就業のパターンは多岐にわたり、おもに出版社の担当者とやり取りしながら、作品の執筆を進めていきます。
小説家になるには?
小説家になるには、さまざまな方法があります。代表的なのは文芸誌などが主催する新人賞受賞を経るパターンです。芥川賞や直木賞といった有名な賞に加え、文學界新人賞、小説すばる新人賞などさまざまな賞が存在し、毎年新たな受賞者が小説家としてデビューを果たしています。
そのほかにも自ら出版社に作品を持ち込むケースや、自費出版から人気を獲得しデビューする小説家もいます。自身のホームページなどで作品を発表し支持を獲得したり、小説投稿サイトからプロになったりするなど、その手段は一つではありません。
医者や弁護士、芸能人、新聞記者、編集者、政治家など別の職業を経て(場合によっては並行しながら)話題の小説を発表する小説家もいます。
ただし当たり前ですが、小説家として売れるためには作品を書き上げなければいけません。また、一度でチャンスをつかむ稀有な才能と運を持ち合わせていない限り、継続的に小説を書き続けることも必要です。そのために、ときには相当の精神力を必要とするでしょう。
必要な資格
小説家になるために必要な資格はありません。
文章読解、作成能力検定など文章の作成・読解に関わる資格などは存在しますが、それはあくまでも伝わりやすい文章作成の糧でしかなく、特定の資格がないと小説家デビューできないなどということは決してありません。
資格などよりも小説家には人の心をつかむ小説を書くことが大切で、読者に内容が伝わることはもちろん、世界観を文章化する表現力が欠かせません。自分以外の小説を熟読したり、新聞を読んだりといった鍛錬はもちろん、作品の面白さ、臨場感を出すための経験や、小説家独自の哲学が必要となるでしょう。
<h4>専門的な学校・学科はあるの?<h4>
小説家になるために、特定の学校や学科で学ばなければいけないという条件は一切ありません。ただし大学の文学部などでは、小説に必要なさまざまな学問を学ぶことができるほか、小説をはじめとする文芸作品の研究を通して、小説の読解方法や表現方法などを深めることもできます。
専門学校によっては小説家やシナリオライターを目指す人に向けて、小説の書き方や売れる小説の内容について、直接的に学べる学校もあります。そのような学校ではプロの小説家の講義を受けられたり、出版社とコネクションがあったりなど、小説家としてデビューするためのチャンスが拡がる場合もあります。
小説家の年収・給与・収入
職業作家として安定した収入を稼ぎ続けられるのは、本当に限られた数の人しかいません。人気の小説家になれば、年収数千万円、数億円稼ぐ場合もありますが、それはほんのわずかで、しかも人気を安定的に保てるとは限りません。そのため、小説家の一般的な収入を表すのは困難です。
ただし、小説で稼げる金額を想定することはできます。小説家の収入としてまず挙げられるのが原稿料です。原稿料おもに、400字詰め原稿用紙1枚当たりの値段が決まっており、一般的には1枚当たり3000円〜4000円ほどとされています。仮に1枚3000円で、原稿用紙250枚分の作品を書いた場合、得られる原稿料は75万円です。
次に作家の収入として有名な印税ですが、これは本の売上によって変わってきます。出版社によりその割合は異なりますが、おおよそ売上の10%ほどが小説家の手元に入るといわれています(初版の冊数に対して支払われる場合もあります)。
1冊1000円の単行本が1万冊売れれば売上は1,000万円ですが、印税率が10%の場合、100万円が印税として小説家の収入となります。
また、小説が映画化やドラマ化された場合、原作使用料が発生します。その金額は200万円〜400万円ほどであることが多く、映像作品のヒットに応じて金額が増えるわけではありません。
小説家の社会のニーズ・将来性・まとめ
小説の存在がなくなることはなく、小説家の職業はこれからも残り続けるでしょう。ただし、小説家として収入を稼ぎ続けることや、高額の売上を叩き出すベストセラーを書けるのがほんの一部であることは、今も昔も変わりません。
また出版業界は現在不況の状態にあります。他のエンターテインメントに押され、以前より本が売れない時代となっています。
その分、インターネットなどを通して小説を発表するチャンス自体は多く、そこから人気を獲得できる可能性もないわけではありません。その点では、以前よりも多くの人が小説家になりやすい環境であるとはいえます。
これからの小説家は、小説というものをどのように定義し、どう表現するか、どのような方法で作品を売り込むかなど、根本的な小説のあり方についても考えていく必要があるでしょう。
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