楽器製作者

楽器は音楽に欠かすことのできない存在で、今日では楽器を演奏する人口も非常に増えました。子どもから大人、プロにいたるまでさまざまな世代、あらゆる人々が思い思いに楽器を奏でています。

楽器製作者はそのような楽器を作り出し、人々に音楽の感動を生み出す職業です。その役割を果たすには、製作に関する技術だけでなく、演奏者の思いに応えられる音楽的知識なども必要で、一人前になるのに長い年月を要することもあります。

また、一口に楽器製作者といってもその就業先や就業形態、携わる分野や要求されるレベルはさまざまです。

楽器製作者の仕事内容はどういったものなのか、就業するための方法も含め、詳しく見ていきましょう。

楽器製作者の仕事

楽器の製作といってもその携わり方には複数の形があります。最もイメージしやすいのは、一人で設計、組み立て、塗装から音出し、調整まで行なう「楽器職人」でしょう。一流の職人が作り上げる楽器はもはや芸術作品で、それを生み出せるのは高度な技術を持ったほんの一握りの匠のみです。

楽器職人を目指す場合、独学で技術を習得するのは極めて難しいため、名のある楽器製作者に弟子入りすることが多いです。そこで、長い年月をかけて楽器製作の技術を磨いていくことになります。

ただし製作する楽器を求める人がいなければ、楽器製作者の仕事は成立しません。その場合、楽器製作者は、製作だけでなく、買い手を探すための市場開拓も行なわなければいけません。告知活動や販売先との折衝など、楽器の営業活動も重要な仕事内容になることがあります。

このように楽器製作者への夢を叶えるためには、あくなき探求心と情熱、根気強さ、そして才能が必要となります。

一方楽器には、楽器メーカーが製作する量産モデルも存在します。量産モデルの製作は多くの場合分業制で行なわれ、一つの楽器を一人で作り上げる楽器職人の製作とは違う工程を踏みます。楽器メーカーの楽器製作者のなかには、楽器に使用する一つのパーツや部品に特化して、製作し続ける人もいます。

その場合、楽器製作者に求められる技術レベルや、就業へのプロセスは、職人の場合と異なります。作業内容も手作業だけでなく、機械操作やコンピューターを用いることも少なくありません。

そもそも楽器にはさまざまな種類があり、伝統楽器からデジタル楽器まで、その使われ方、需要、流通量やニーズ、製作の技術レベルなどもさまざまです。製作過程もデザイン、材質選びから始まり、カスタマイズや修理、調律など多岐にわたります。

プロの演奏家の楽器を製作するのであれば、相応の知識と技術を身につけなければいけません。また最新の楽器に携わるのであれば、パソコンなどのスキルも不可欠でしょう。

製作だけでなく、その楽器の普及に向けた営業活動も必要かもしれません。そうなれば、製作技術だけでなく、販売、事務などの社会人スキルも磨く必要があります。

このように、楽器製作者はその取り扱う楽器や、関わる工程などにより、求められるスキルや就業の仕方が大きく変わります。

漠然と楽器製作者を目指すのではなく、どの楽器の、どのような製作に関わりたいのかを、明確にすることが大切です。職人を目指すのか、楽器メーカーで量産モデルの製作に携わるのか、事前に具体的な就業イメージを固めておくとよいでしょう。

楽器製作者になるには?

品質の良い楽器の製作は一朝一夕で成せるものではありません。楽器職人を目指す場合、多くの修業を積み、技術、信頼ともに長い年月をかけて獲得していくことは避けて通れません。

そのため楽器製作者になる方法として、一流の楽器職人のもとに弟子入りし、その製作スキルを10年単位で磨いていくことが挙げられます。楽器の種類によっては留学なども視野に入れる必要があります。

一方、楽器メーカーや楽器工房へ就職し、製作に携わることも楽器製作にあたります。楽器メーカーの量産モデルの場合、その作業は分業制で行なわれることが多いので、そこで求められる専門的なスキルを身につける必要があります。

楽器製作の基礎が学べる学科や専門学校もあり、そこから楽器メーカーへ就職するケースも多く見られます。まずは自分が、どの楽器の、どのような製作過程に関わりたいのかを決定し、それに必要なスキルを身につけられる進路を選択するとよいでしょう。

必要な資格

楽器製作者に求められるのは製作にかかわる技術であるため、就業にあたっては特定の資格は必要ありません。

ただし、ピアノの調律師になるための国家資格「ピアノ調律技能士」など、職種によっては特定の技能を習得しなければいけないこともあります。

また、楽器製作を学べる専門学校で所定の科目を履修すれば、各楽器メーカー発行の認定証が交付され、それが楽器メーカー就職の際に、有利になる場合もあります。

さらに楽器製作においては、製作する楽器に関する知識や、演奏技術も必要になるでしょう。自身が製作する楽器や職種に必要なスキルや知識、資格を身につけていきましょう。

<h4>専門的な学校・学科はあるの?<h4>

楽器製作者になるには、楽器に関わる広い知識が必要となるため、大学の芸術学部や音楽学科などで器楽について広く学ぶ方法もあります。

また、楽器の種類にもよりますが、楽器製作について学べる専門学校もあり、製作技術や知識をより具体的に学ぶことも可能です。

自分が志す楽器製作技術が習得できる進路を選定するようにしましょう。

楽器製作者の年収・給与・収入

楽器製作者の収入は、製作する楽器や、携わる仕事の種類によって異なります。当然、プロの演奏家から注文を受けるような職人になれば、楽器一つの製作で100万円以上の収入を得ることもあります。ただし、そのような職人はほんの一部です。

楽器メーカーに就職し、楽器製作に携わった場合、初任給は15万円〜20万円程度からのスタートで、キャリアを重ねたのちも平均年収は300万円〜400万円ほどです。

平均的なサラリーマンと比べるとやや少なめではありますが、大手の楽器メーカーでは、就労年数によっては800万円ほどの年収を得られることもあり、その額は勤務する楽器メーカーによっても幅が見られます。

もちろん製作する楽器の種類や、社会でのニーズによっても収入や単価、製作工程は変わってくるので、一概に楽器製作者の収入を把握することはできません。

とはいえいずれの場合も、楽器製作に携わるには、楽器への愛着と製作技術を学ぶ根気強さが必要なのは間違いないでしょう。

楽器製作者の社会のニーズ・将来性・まとめ

楽器製作に限らず、現在伝統的なものづくりの世界は、経営環境の悪化や後継者不足により難しい局面に立たされています。楽器製作者の将来的な安定性も楽観視できるものではありません。

少子化に伴い楽器を買う子どもの人数も減っており、また、音楽制作の現場ではDAWなどのデジタルによる演奏が一般化してきていて、楽器の国内需要は以前よりも減少傾向にあります。

とはいえ、音楽に親しむ人々は常に一定数おり、楽器の形態や活用法、デザイン、楽しみ方はまだ多くの可能性を秘めています。企業戦略によっては、また楽器と、その製作者のニーズも増える可能性は大いにあります。

楽器製作者を志すのであれば、製作に関わる高い技術や知識を習得するだけでなく、楽器の置かれた状況やニーズなどについても考察する必要があるでしょう。

楽器には需要の変動こそあっても、変わらぬ価値と魅力があります。楽器製作に携わる人は、その素晴らしさを継承していく役割も担っているのです。

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