税理士の仕事
税理士のおもな仕事は、以下の3つにわけられます。
①税金の申告・申請代行
所得税・法人税・相続税などに関する申告・申請を代行する業務です。近年は国税庁が提供する国税電子申告・納税システム「e-Tax」を利用した税務代理が主流になりつつあります。おもな取引先は、中小企業や自営業者、個人事業などです。また、クライアントに税務調査が入った場合は、税務代理をした者として立ち会うこともあります。
税務申告・申請はクライアントから継続的に依頼を受ける場合もあれば、相続や不動産売買が発生したタイミングでピンポイントに依頼を受ける場合もあります。
②税務書類の作成
税金を申告するためには、さまざまな書類を用意する必要があります。こうした税務署に提出する税務書類を作成する業務も、税理士の仕事の一つです。
③税金に関する相談
「これは経費に含まれますか?」「このケースは申告の必要がありますか?」といった税金に関する相談に対して、適切なアドバイスを行なうことも、税理士の仕事の一つです。継続的な依頼を受けているクライアントに助言をする場合もあれば、税務申告の委託を決める際の事前相談として助言を行なう場合もあります。
上記3つの業務は、税理士の「独占業務」とされています。このほかにも、記帳代行や行政支援、決算業務や会計相談、税金に関するコンサルティング業務など……税理士の業務内容は、所属する組織や税理士本人のカラーによって実にさまざまです。
税理士は税理士法人や税理士事務所で働くケースが一般的ですが、なかには一般企業の経理や財務部門で働く税理士もいます。
税理士法人と税理士事務所の最も大きな違いは、組織としての規模です。税理士法人は通常2名以上の税理士で構成されており、国内外にサービスを展開しているところもあります。業界最大手クラスの法人では高待遇での採用を期待でき、給与水準も高い傾向があります。ただし、取引先には海外の企業や個人が含まれるため高い語学力を求められるうえ、一般的な税理士事務所では扱わないような専門的な内容も多く、かなりの激務になります。
一方、税理士事務所は税理士個人が運営しているケースが大半です。大手法人と比べて給与水準はやや低めですが、ライフワークバランスを取りやすいというメリットがあります。
税理士法人や税理士事務所の繁忙期は、法人税の申告が集中する5月と、所得税の確定申告が行なわれる2月中旬から3月下旬です。この時期は少人数の税理士事務所であっても非常に忙しく、休日出勤や連日残業になることも珍しくありません。
一般企業の経理や財務部門においてもおもな業務内容は変わらず、その企業の税務処理をまかされるケースが一般的です。外部の税理士との違いは、組織内の税理士としてより深い視点からのアドバイスを行なえることです。税務や経営に関する相談役として、外部の税理士にはないやりがいを感じられるでしょう。
税理士になるには?
税理士になるためには、税理士試験に合格する必要があります。税理士試験に合格した後は、税理士事務所などで2年以上の実務経験を積むケースが一般的です。その後、税理士会への入会と日本税理士会連合会への登録を済ませ、晴れて「税理士」として活動できるようになります。なお、受験前に税理士事務所などで2年以上働いていた経験がある場合は、合格後の実務経験をスキップできます。
必要な資格
税理士として働くためには、国家資格である税理士資格を取得する必要があります。試験は簿記論および財務諸表論の2科目に加え、所得税法・法人税法・相続税法などの税法に属する科目のうち、受験者が選択する3科目によって行なわれます。
税理士試験は科目合格制を採用しており、一度で5科目すべてに合格する必要はありません。何年かに分けてでも、合格科目が5科目となれば税理士試験に合格したことになります。
なお、税理士試験を受けるには、以下のいずれかの受験資格が必要です。
①学識による受験資格
- 大学、短大または高等専門学校を卒業した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、社会科学に属する科目を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、社会科学に属する科目を1科目以上履修した者
- 司法試験合格者
- 公認会計士の短答式試験に合格した者
②資格による受験資格
- 日商簿記検定1級合格者
- 全経簿記検定上級合格者
③職歴による受験資格
- 法人または事業を行なう個人の会計に関する事務に2年以上従事した者
- 銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
- 税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
専門的な学校・学科はあるの?
税理士を目指す場合は、大学の法学部や経済学部、経営学部や商学部などに進むケースが一般的です。
税理士に特化した学校・学科はありませんが、多くの資格予備校には税理士試験の対策講座が設けられています。スピーディかつ確実な合格を目指すのであれば、そういった資格予備校へ通うことも検討しましょう。
税理士の年収・給与・収入
税理士の平均給与は、年間約1,031万円とされています。日本人の平均年収が461万円であることを考えても、税理士は高収入な職業であるといえるでしょう。
ただし、税理士の収入は、経験年数や実績によって大きく異なります。例えば税理士の年収を年代別に見た場合、25歳~29歳の平均年収は約506万円ですが、30歳~34歳になると平均年収は約913万円になります。高い収入を得るためには、税理士としてのキャリアを積み、専門性を高めることが大切なのです。
また、税理士の収入は、所属する税理士法人や事務所によっても左右されます。一般的に、大手税理士法人は高い給与水準を維持しているところが多く、高収入を得やすいとされています。また、税理士事務所によってはインセンティブ報酬を設けているところもあり、業績アップがそのまま収入アップにつながるため、やる気次第でどんどん給与を高められます。
さらなる高収入を目指す場合は、独立・開業も視野に入れましょう。事務所の運営は大変なことも多いですが、軌道に乗りさえすれば大きな成功を見込めます。
税理士の社会のニーズ・将来性・まとめ
税理士人口は増加の一途をたどっており、2021年における国内の税理士登録者数は約8万人にのぼります。特に日本の主要都市には大小さまざまな税理士事務所が密集しており、新しく独立開業するのはとても難しいとされています。今後税理士として独立開業を考えている人は、他の事務所との差別化が必須になるといえるでしょう。
また、近年は人工知能領域の発展にともない、AIによって人間の仕事が奪われるリスクが叫ばれています。税理士も「AIに取って替わられる」とされることの多い職業ですが、税理士の仕事のすべてをAIが代替できるわけではありません。
例えばAIは事務処理や書類作成といった単純作業には長けていますが、専門的かつ柔軟な対応を求められる業務は苦手としています。特に税金に関するアドバイスや経営相談においては、顧客との密なコミュニケーションが欠かせません。経営課題の相談や、複雑な税務事例への対応など、税理士にしかできない業務領域はまだまだたくさんあります。
AIによって事務処理や書類作成が効率化されていけば、税理士はより専門的な業務に集中しやすくなります。税理士は、新しい社会においても必要不可欠な職業であり続けるでしょう。ただし、新しい技術の導入により、税理士の働き方が変わっていく可能性は大いにあります。これから税理士を目指す人は、社会の変化に柔軟に対応できるよう、自分のスキルを高め続ける必要があるでしょう。
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