建築士

建築士の仕事

建築士は、建設物の設計・工事監理のスペシャリストです。住宅・ビル・学校・公共施設などあらゆる建築物の設計に携わり、豊かな街づくりに貢献できます。

建築士の仕事は、おもに以下の3つに分けられます。

①設計

発注者の要望や建築物の用途・規模を基に、空調や給排水設備、周辺環境などさまざまな点を考慮して設計図を作成します。発注者のイメージを形づくる作業のため、綿密な打ち合わせは欠かせません。

建築士の設計業務は、構造設計・設備設計・意匠設計の3種類に大別できます。

  • 構造設計

建築物の土台や柱、梁や鉄骨といった構造部分の設計業務です。地震や台風などの自然災害から人々を守るための、頑丈で壊れにくい建築物を設計することが求められます。

  • 設備設計

空調や電気、給水器といった設備部分の設計業務です。住宅の設備設計はある程度規格化されていますが、高層マンションや公共施設など大きな建築物の場合は、複雑な設計が必要になります。設備関連の技術は日進月歩なので、新たな技術や、新製品の情報をしっかりと学んでいくことが大切です。

  • 意匠設計

建築物の外観や、内部の間取りなどをデザインする設計業務です。発注者のイメージを尊重しつつ、実用性も兼ね備えた建築物をデザインする必要があります。また、建築物単独で考えるのではなく、周辺環境との調和を考慮することも重要です。

②工事監理

工事現場へ足を運び現場の工事監理を行ないます。設計図どおりに建設が進んでいるかどうか確認し、お客様への報告も重要な業務です。

③申請手続き

建設許可や道路使用許可の申請も、建築士の仕事です。また、建築物を設計する前には、その土地に関する条例を調査する必要があります。

建築士になるためには、「公益財団法人 建築技術教育普及センター」が実施する建築士資格に合格する必要があります。その中でも最も難易度の高い「一級建築士」にはいくつかの受験資格が設けられていますが、一番の近道は、大学や高等専門学校において指定科目を修めることです。建築計画や構造力学といった、いくつかの指定科目を修了すれば、卒業後すぐに一級建築士の受験資格を得られます。

資格取得後は、建築設計事務所や建設会社、ハウスメーカーなどに就職する場合が大半ですが、なかには自治体の都市計画や建築部門で働く人もいます。また、建築士としての知識を活かし、インテリア系の会社に就職する人も少なくありません。

必要な資格

建築士は、建築士法に基づく国家資格です。一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類にわかれており、それぞれ設計できる建築物の範囲が定められています。

①一級建築士

国土交通大臣の免許を受け、すべての建築物の設計・工事監理などを行なえる資格です。一般住宅はもちろん、延べ面積が1000㎡以上の学校・病院・百貨店など、大規模な設計を手がけられる点が魅力です。

一級建築士試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 大学、高等専門学校(旧制大学を含む)において、指定科目を修めて卒業した者
  • 二級建築士の資格を有する者
  • 国土交通大臣が上記の者と同等以上の知識および技能を有すると認める者

また、一級建築士としての免許を受けるためには、通算2年以上の実務経験が必要です。一級建築士の資格は難易度が高く、近年の合格率は10%前後とされています。

②二級建築士

都道府県知事の免許を受け、一般住宅をはじめとした比較的小規模な建築物の設計・工事監理などを行なえる資格です。おおむね戸建て住宅ほどの規模であれば、構造に関わらずすべての建築物を設計できます。ハウスメーカーや地域密着型の工務店などに就職する場合は、二級建築士の資格所持が有利になります。

二級建築士試験を受験するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

  • 大学、短期大学、高等専門学校、高等学校、専修学校、職業訓練校等において、指定科目を修めて卒業した者
  • 建築設備士の資格を有する者
  • その他都道府県知事が特に認める者(外国大学を卒業した者等)で、所定の年数以上の実務経験がある者
  • 建築に関する学歴はないが、7年以上の実務経験がある者

③木造建築士

都道府県知事の免許を受け、木造建築物の設計・工事監理などを行なえる資格です。2階以下の木造建築物のみ設計可能で、二級建築士と比較すると、業務範囲は限定的になります。

なお、木造建築士の受験資格は、二級建築士と同一です。

専門的な学校・学科はあるの?

大学や高等専門学校において指定科目を修めれば、卒業後すぐに一級建築士試験を受験できます。そのため、建築士を目指す高校生は、工学系学部や芸術系学部の建築学科へ進学するケースが一般的です。また、一部の学校では、他学部から独立する形で建築学部が設けられていることもあります。もちろん、まずは二級建築士を取得して、就職して実務経験を積んでから一級建築士にチャレンジすることも可能です。大学や高等専門学校への進学は絶対条件ではありませんが、、体系的に知識を学ぶことは建築士を目指す上で大きな武器となるでしょう。

建築士の年収・給与・収入

厚生労働省の調査によると、一級建築士の平均年収は約620万円です。日本人の年収中央値が442万円であることを考えると、一級建築士は比較的高収入な部類に入るといえるでしょう。

一方、二級建築士の場合は、年収350~500万円台がボリュームゾーンです。木造建築士については公的なデータはないものの、年収350万円程度が一般的とされています。一級建築士は設計可能な範囲に制限がない分、年収が上がりやすいと考えられます。

建築士の収入は経験やスキル、職場の規模によっても大きく左右されます。高収入の建築士を目指すなら、自己研鑽はもちろんのこと、働く場所を選ぶことも大切です。例えば、大手ゼネコンは福利厚生が充実しており、給与水準も高い傾向にあります。大手ゼネコンの管理職は、年収が1,000万円を超えるケースもあるようです。また、公共施設や街の再開発事業など、大規模プロジェクトに携われる点も魅力的といえるでしょう。

一方、建築設計事務所の給与水準はそれほど高くないものの、「依頼者との距離感が近い」「事務所それぞれに特色があり、特定の分野に集中しやすい」といったメリットがあります。また、独立開業を視野に入れて、建築設計事務所で実績を積む人も多いようです。

建築士の社会のニーズ・将来性・まとめ

かつて高度経済成長期の真っ只中にあった日本では、マンションやホテルなど多くの建築物が建設されました。しかし、こうした建設ラッシュによって生み出された建築物も、今ではそのほとんどが老朽化しています。老朽化した建築物の解体・建て替えにも、建築士のスキルが不可欠です。老朽化した建築物を有効活用し、より良い街づくりを実現するためにも、建築士の需要は今後ますます上がっていくことでしょう。

その一方で、建築士の数は減少傾向にあり、あきらかな供給不足が指摘されています。また、建築士は高齢化が進んでおり、一級建築士の平均年齢は56.2歳です。若い世代の建築士は非常に貴重な人材となり、多くの設計需要があるでしょう。

これからの時代は、高齢化やエネルギー消費、災害対策や環境保全なども大きなテーマとなります。建築士は、安心・安全な街づくりに欠かせない存在として、いつの時代も変わらず社会から求められることでしょう。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

最近の記事 おすすめ記事
  1. 登録されている記事はございません。
  1. 獣医師

  2. 中小企業診断士

  3. 助産師

カテゴリー

アーカイブ

検索

TOP
TOP