土地家屋調査士

土地家屋調査士は、不動産登記をするのに必要な土地や家屋の調査や測量をしたり、土地の境界(筆界)を明らかにしたりする業務の専門家です。建物を新築したとき、土地の売買や分割をするとき、土地の境界線が不明なときなどに活躍します。土地家屋調査士は、不動産の所有者に代わって位置や面積などを確認し、法務局に登記の申請を行なえる唯一の国家資格者です。

土地家屋調査士は、法律の専門知識を有しながらも、作業着を着て現地に足を運びスコップで地面を掘るなどの現場仕事も行なう、ホワイトカラーとブルーカラーの中間的な立場であるのも特徴の一つです。

土地家屋調査士の仕事

土地家屋調査士の仕事はおもに3つあります。

➀不動産登記に必要な土地や家屋の調査や測量

不動産の情報を正確に不動産登記に内容を反映するための仕事です。依頼を受けたら、まずは不動産の関係書類を確認するところから始まります。そして、不動産が存在する場所に実際に足を運び、土地や建物がどこにあるのか、どのような形をしているか、どのような用途に使用されているかなどを調査したり、測量して図面を作製したりします。

事務的な作業もありますが、現地に出向いて屋外での作業が必要不可欠です。

➁不動産登記手続きの代理

土地や建物は貴重な財産なので、土地や建物の状況・所有者・不動産に関連する権利を不動産登記として公示する制度があります。不動産登記は不動産の所有者による申請が必要ですが、手続きが複雑なため、依頼を受けて土地家屋調査士が手続きの代理を行ないます。

➀で実施した不動産の調査・測量の結果を踏まえて正確な数値を算出し、登記申請に必要な書類を作成して提出します。

➂土地の境界の特定

土地の境界が曖昧になってしまっている場合に、どこが境目かを特定するのも、土地家屋調査士の仕事です。ときには土地と土地の境界をめぐるトラブル(境界紛争)に発展しているケースもあります。隣の土地の所有者とトラブルが起こっているときには、弁護士と共同で裁判外でのトラブルの解決を行なうこともできます。

不動産の調査・測量などの仕事は、個人からの依頼だけではなく、国や公共団体からのものもあります。ただし、公共測量などの規模が大きい仕事は個人事務所で受注することは少なく、大手の測量会社で受注されるケースが多いです。

土地家屋調査士になるには?

土地家屋調査士になるためには、土地家屋調査士試験(国家試験)に合格する必要があります。合格率は10%以下と難易度が高い試験です。

土地家屋調査士の国家試験は以下の3つで構成されています。

・午前の部:平面測量や作図の筆記試験(おもに工学系)

・午後の部:民法や不動産の表示に関する登記、筆界の知識に関する筆記試験(おもに法律系)

・口述試験:午前・午後の部の両方合格した場合のみ受験可能で、不動産の表示に関する登記、土地家屋調査士として必要な知識や一般常識を対象とした面接方式による試験

なお、測量士、測量士補、一級・二級建築士のいずれかの資格を有していれば、午前の部は免除されます。

そして、試験に合格したあとは、日本土地家屋調査士会連合会に登録するとともに、開業する地域の土地家屋調査士会への入会が必要です。

必要な資格

土地家屋調査士試験の受験資格には、年齢や学歴などの制限はありません。ただ、測量士、測量士補、一級・二級建築士のいずれかを持っていれば午前の部が免除になるので、測量士補の資格を取得してから土地家屋調査士試験に挑戦することも多いようです。測量士補の資格を持っていると、試験の一部免除を受けられるだけでなく、土地家屋調査士にも必要な専門的な測量技術を習得できます。

土地家屋調査士は作図をする機会が多く、提出する書類にも記載する必要があるので、CAD(設計・製図の支援システム)の資格を有しているとよいでしょう。また、作図から面積を割り出したり、坪単位を瞬時に平米数に置き換えたりと、数学のスキルも必要です。関数電卓を使いこなせるとなおよいです。

また、土地家屋調査士は他人の大事な財産や権利に関連する仕事であることから、依頼者から信頼してもらえるよう誠実に仕事をしなければいけません。さらに、緻密な作業が得意であることや数字に強いことも必要不可欠なスキルです。加えて、依頼者や隣地の土地所有者と話す機会や、弁護士、司法書士、行政書士などの各分野のエキスパートと連携する機会も多くあることから、コミュニケーション能力も必要でしょう。

少し違う側面から見ると、土地家屋調査士の仕事は屋外での作業も多くあるため、体力をつけておくのが望ましいです。また、不動産がある場所まで出向かなければいけませんので、大都市の限られた範囲で仕事をする以外は、普通自動車免許が必須といえます。

専門的な学校・学科はあるの?

土地家屋調査士に特化した専門的な学校はありません。しかし、土地家屋調査士の試験は、不動産に関する法律や測量関係の出題が多いため、法学系や工学系の大学へ進学するのが近道です。

土地家屋調査士試験合格のための勉強時間は、不動産に関わる仕事に従事しているかどうか、法律の知識があるかどうかなどにより個人差はありますが、1000時間が必要とされています。参考書を利用した独学での受験も可能ですが、通信講座の受講やスクールへの通学などの選択肢もあるので、自分に合った方法での勉強が必要です。

土地家屋調査士の年収・給与・収入

土地家屋調査士としての働き方は、

・独立開業

・土地家屋調査士事務所や測量会社で勤務

・土地家屋調査士法人に所属する

などがあります。

平均年収は500万円程度です。ただし、働き方によっても差が大きく、独立開業している場合などには年収が1000万円を超えるともいわれています。

実際に土地家屋調査士が依頼を受けた場合の報酬額は、土地家屋調査士自らが決定できます。仕事の難易度に応じて変動しますが、通常の戸建ての登記の場合は10万円前後です。

土地家屋調査士のなかには、仕事の幅を広げたり、年収を上げるために別の資格を取得している人もいます。土地家屋調査士の仕事と関連が深い、司法書士や測量士などの資格を持っていると、独立して開業する際に仕事の幅が広がるでしょう。

土地家屋調査士の社会のニーズ・将来性・まとめ

2018年の総務省統計局の調査によると、日本の総住宅数は6000万戸以上にのぼっており、オフィスビルや商業ビル、会社社屋や工場などの建物をあわせると、かなりの数の建物があることがわかります。これに加えて土地も存在します。

土地家屋調査士は、土地の売買や建物の増改築時には必要とされる職業なので、将来的にも仕事がなくなることはないでしょう。また、道路や公園、下水道などの基盤整備事業や都市の再開発などは今後も行なわれると予想されるため、活躍の場は引き続きあると考えられます。

2021年現在、土地家屋調査士は全国で1万6000人いますが、8割以上が50歳以上です。今後は土地家屋調査士の高齢化も問題となってくるでしょう。これまでの経験やノウハウが活きてくる場面ももちろんあると思いますが、現場作業が多い土地家屋調査士は体力も必要です。若い世代の活躍が望まれるはずです。

さらに近年では、所有者不明土地の問題や空き家問題が多く発生し、日本の土地の約20%、九州に匹敵する所有者不明土地が存在するといわれています。土地家屋調査士を取り巻く法律が改正されているのも、所有者不明土地問題の解決と予防が、国の重要施策になっているからです。また、かつて経験したことのないような甚大な災害が多発し、その影響で土地の境界がわからなくなってしまう声も聞かれます。土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家として、この大変革に対応する能力の発揮や災害と向き合う取組みが期待されるでしょう。

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