仲居

仲居とは、宿泊施設においてお客様の身の回りのお世話をするスタッフのことです。

かつては料亭で給仕・接待をする女性のことも「仲居」と呼んでいましたが、現在ではおもに旅館における衣・食・住のサポート係を指します。基本的な仕事内容はホテルの客室スタッフと同じですが、お客様と直接関わる機会が多い傾向があります。特に「部屋つき」と呼ばれる仲居は、宿泊中のお世話全般に対応します。

お客様と接する機会が多い分、仲居の印象がそのまま旅館の印象になることもあり、まさに「旅館の顔」ともいえる存在です。

仲居の仕事

仲居の業務内容は、おもに以下の5つに分けられます。

①お客様のお迎え・案内

仲居の仕事は、旅館に到着したお客様を出迎えるところからはじまります。仲居の印象=旅館の第一印象となるため、明るく物腰やわらかに接することが大切です。フロントでのチェックインが済んだら、お客様の荷物を運びながら客室まで案内します。その際、食堂や湯処、お土産処など、館内の施設を紹介して回ることもあります。

客室に着いたら、まずお茶とお菓子をお出しするケースが一般的です。そして、テレビやエアコン、冷蔵庫といった室内の設備について紹介し、食事の希望時間やアレルギーの有無についてヒアリングを行ないます。

②食事の配膳・片付け

朝食や夕食の際、お客様に食事を配膳するのも仲居の仕事のひとつです。客室で食事をとる、いわゆる「部屋食」のほか、館内の食堂や特別室などで食事をとるお客様もいます。旅館の食事は品数も量も多いため、効率的かつ丁寧に配膳することが大切です。お客様の人数が多くなるほど一度に運ぶ量が増えるため、腕力や体力も求められます。

食事を配膳する際は、料理についての説明も行ないます。お客様からの質問にも即座に答えられるよう、当日のメニューや調理方法、食材についての十分な知識が必要です。

ひととおり配膳を終えたあとも、飲み物の注文を受けたり、食べ終わったお皿を下げたり、お客様の食べる速度に合わせて次の料理を提供したり……と、素早くテキパキと行動します。

③布団敷き

夕食が済んだら、客室に布団を敷きます。旅館の布団がピシッとそろっていると、見ていて気持ちが良いものです。お客様の旅の疲れを癒せるよう、シーツの角までしっかりと気を配ります。

④お客様のお見送り

お客様に「また泊まりたい」と思っていただけるよう、最後の瞬間まで丁寧に接客します。お辞儀の角度や立ち姿に気を配ることはもちろん、心を込めた「いってらっしゃいませ」「またのお越しをお待ちしております」という言葉がなによりも重要です。お客様の姿が見えなくなるまで、晴れやかな笑顔でお見送りしましょう。

⑤清掃

お客様をお見送りしたあとは、客室内の清掃を行ないます。次のお客様を気持ちよくお迎えするため、隅々まできれいに掃除します。

また、ロビーや廊下、湯処や食堂など、館内全体をスタッフ総出で清掃することもあります。一方で、館内清掃は清掃業者に依頼している旅館もあったりと、清掃業務については旅館の規模によってさまざまです。

このように、仲居の業務内容は多岐に渡ります。また、旅館にはさまざまなお客様が訪れます。外国からのお客様には日本の文化を体験できるようなスポットをおすすめしたり、高齢のお客様に合わせて歩くペースを落としたりと、それぞれのお客様に合わせた対応が求められることもあるでしょう。また、お客様の表情や言葉から、お客様が望んでいるサービスを読み取ることも大切です。こういったマニュアル化されていない対応はハードルが高いものですが、正解がないからこそのやりがいを感じられます。

また、お客様との会話を楽しめることも、仲居のやりがいのひとつです。おすすめの観光スポットを提案したり、旅館での過ごし方を案内したり、仲居との何気ない会話からリピーターになってくれるお客様も少なくありません。

仲居はお出迎えからお見送りまで、お客様に最も近いところでおもてなしをする存在です。お客様から直接「ありがとう」「また来ます」という言葉をもらえる機会も多いでしょう。

自分の接客がお客様の喜びや、旅館の評価に直結する責任重大な仕事ですが、お客様から良いリアクションをもらえたときには、それだけ大きな喜びを感じられるはずです。

仲居になるには?

仲居として働く場合は、求人広告を出している旅館に直接問い合わせ、面接を受けるケースが一般的です。正社員としてだけではなく、派遣社員やアルバイト・パートとして働くという手段もあります。

仲居として働くために、特別な資格は必要ありません。ただし、接遇やマナーに関する以下のような資格を取得していると、就職の際に有利に働く可能性があります。

  • サービス接遇検定
  • 接客サービスマナー検定
  • 接客心理検定
  • ホテルビジネス実務検定試験
  • 話し方・伝え方スペシャリスト

               など

資格取得を目指して勉強することは、知識を体系的に学ぶことにもつながります。資格取得のために得た知識は、現場で働くようになってからも役に立つでしょう。

専門的な学校・学科はあるの?

仲居の育成に特化した学校はないものの、観光・ホテル関連の専門学校では、宿泊施設で働くためのホスピタリティや接客力を磨くことができます。また、なかには国内外のホテルインターンシップや、語学のカリキュラムが組まれている学校もあります。「外国からのお客様を接客できるようになりたい」「京都や広島など、外国人観光客が多い土地で働きたい」と考えている人にもおすすめです。

仲居の年収・給与・収入

厚生労働省の調査によると、仲居の平均年収は320万円、月収にすると25万円です。日本人の平均年収が433万円であることを考えると、仲居の年収はやや低めといえるでしょう。

仲居の年収は、旅館の規模が大きくなるほど、やや高くなる傾向があります。例えば10~99人規模の旅館の平均年収は288万円ですが、1,000人以上規模の旅館の平均年収は387万円です。

また、仲居の収入は勤務地によっても左右され、地方の小さな旅館は収入が低くなる傾向があります。一方、京都や箱根など、国内でも有数の観光地では年収が高くなる傾向です。

このように、仲居の収入は平均と比べやや低めです。一方、観光業界はまかないや寮費を提供してくれるところが多く、生活費を抑えやすいというメリットがあります。なかには住み込みで働ける旅館もあるため、収入が低くても生活には困らないケースが多いでしょう。

仲居の社会のニーズ・将来性・まとめ

観光業界では、深刻な人手不足が叫ばれています。旅館も例外ではなく、どこも人材の確保に苦労しているようです。

観光業界の人材が不足する背景としては、「激務で自由な時間が少ない」「拘束時間が長い」などのネガティブなイメージが先行していることが挙げられます。現在はこうしたイメージを払拭するため、業界全体で対応を模索している最中です。なかには、ワークライフバランスを重視して盆暮れ正月に休業する旅館や、お試しとして一定期間の仮雇用を導入する旅館など、時代に合わせたフレキシブルな対応を行なう旅館も登場しています。

アフターコロナのインバウンド需要の期待が高まる昨今、日本ならではの「おもてなし」の心を持った仲居は、国内の観光業において重要な役割を担っています。

また、仲居は旅館にとっても、リピーターを獲得するためになくてはならない存在です。現状は、人材の不足を派遣社員でカバーしている旅館も少なくないため、仲居の需要は当面下がらないと考えてよいでしょう。

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