京都には、日本が誇るべき素晴らしき文化が数多く存在しています。
その中でも工芸品は古い歴史を持つものであり、熟練の職人たちにより伝統と技術が守り続けられています。
本記事では、京都の「京もの指定工芸品」に指定されている、「京石工芸品」と「京人形」についてまとめました。
これらについて詳しく知りたい方は、ぜひ本記事を確認してみてください。
京石工芸品について
京石工芸品について下記の内容にまとめました。
- 京石工芸品とは?
- 京石工芸品の歴史
- 京石工芸品の製造工程について
それぞれ解説します。
京石工芸品とは?
京石工芸品は、京都で製造されている石工品・貴石細工の相性です。
具体的には、京都府京都市、または宇治市周辺で作られているそれらであり、その高い技術から作られる芸術的な石工品・貴石細工で知られています。
京石工芸品が生み出される京都は非常に良質な花崗岩が採取されやすい土地として知られており、古くからそれらを利用した石工品が製造されてきました。
京石工芸品は、その美しき美的感覚から生み出される繊細な仕上がりですが、なんと一人の石工が全ての工程を手がけていくといった特徴があります。
工芸品の多くは工程それぞれに職人が担当となる場合が多いですが、京石工芸品の場合は一人の石工が全てを請け負うため、技術力だけだけでなく研ぎ澄まされた集中力、そして優れた美的感覚が重要です。
石工は京文化の中で育まれ、かつ鍛えられてきた独自のセンスを持ち合わせており、ほかの地域の職人には真似ができない能力を持ちます。
巧みの技を持つ京都の石工の能力があるからこそ、京石工芸品が今日まで発展し続けてきたと言っても過言ではないでしょう。
京石工芸品の歴史
日本における石造文化の歴史は、奈良時代の後期まで遡ることができると言われています。
京石工芸品の歴史が始まったのは、平安遷都の頃。
さまざまな建造物の建設において石造品が必要となってきたことから発展を遂げたと考えられているようです。
平安時代になると仏教文化が伝来してきたことにより、神社仏閣などに石造品が必要となります。
また、安土桃山時代における茶道文化の広がりにより京都の伝統工芸が発展し、それらを共に京石工芸品もその文化に強く影響される形でより進化を遂げることに。
京都といえば美しい日本庭園の存在ですが、それらは茶道文化に大きく影響されていると言われており、相互作用のように京石工芸品の技術と美的センスも磨かれていったと考えられているようです。
それら歴史を経た今も、京石工芸品は熟練の職人たちの手によって美しく生み出され、そして世界の人々たちに強く影響を与えています。
他国にはない、日本の美術様式のひとつを生み出した工芸品こそ京石工芸品といっても過言ではないでしょう。
京石工芸品の製造工程について
京石工芸品はさまざまな種類があります。ここでは、石灯籠の製造工程について下記にまとめました。
- 石まわし
- 荒取り
- 下場造り
- 軒場造り
- 笠裏造り
- 蕨手造り
- 笠上場造り
- ほぞ穴造り
- 裏大入れ造り
- 仕上げ
上記からも分かるように、京石工芸品の製造工程は大変独特です。
まず、石まわしは石灯籠を製造する際に用いられる工程であり、完成形をイメージする形で荒石に墨で寸法の線を書いていく作業になります。
石灯籠自体、宝珠、笠、火袋などの6つの部位を組み立てていく必要があり、まずその指針となる石まわしが重要です。そして次に、石の四隅を掘る荒取りの工程に入り、笠部分を削る下場造りなどが行われます。
また、下場造りでははぴしゃんやぴしゃんなど独特な名のつけられた道具が使用されているようです。
次に、灯籠の側面である軒場造りを行い、笠裏造りが行われます。笠裏造りでは、笠の裏にある段や突端加工の蕨手の墨出しが行われますが、集中力が必要な作業です。
そして、蕨手造り、職人の技術力が試される笠上場造り、裏大入れ造りの工程へと進められていきます。最終的に、全てを組み合わせた上で完成になります。
これら複雑で集中力が必要な作業を、京石工芸品では一人の職人が手掛けます。大変贅沢であり、そして技術力の高さが求められる伝統工芸です。
京人形について
京人形について下記の内容にまとめました。
- 京人形とは?
- 京人形の歴史
- 京人形の製造工程
それぞれ解説します。
京人形とは?
京都では日本人形が製造されていますが、中でも京都府京都市周辺で製造されている日本人形は、京人形と呼ばれています。
京人形の頭部から衣装、さらに小道具に至るまで専門の職人が担当しているなど、大変贅沢な作りの日本人形としても知られています。
京人形は種類がいくつかあり、「五月人形」、「御所人形」、「雛人形」などが存在します。
中でも衣装着人形である雛人形は京人形の中で最も多く製造されていることで知られており、日本各地に流通していることで有名です。
また、武者人形や御所人形などでも京人形は高い需要を誇っており、日本の人形文化を支えている存在といっても過言ではありません。
ほか、時代の流れに沿って生み出される「風俗人形」や「浮世人形」なども人気です。
京人形の歴史
古くより人形は日本人の生活に重要な存在として扱われてきました。
もともと疫病や災厄の身代わりとなっていた人形ですが、平安時代頃からは呪術的な趣旨から外れ、雛(ひいな)といった人形が貴族の間で雛遊びといった形で流行るようになります。
京人形のルーツはこの雛遊びから始まったと言われています。
江戸時代になると3月3日に(上巳)に雛遊びを行う習慣となっていき、雛人形といった形での需要が高まり出しました。
また、端午の節句などで武者人形などの需要が高まる中で京人形も発展していき、京都ならではの人形文化も開花することになります。
日本全国的にさまざまな人形文化が各地域で発展したことにより、京人形も重要な工芸品の一つといった認識で文化を花開かせていったと考えることができるでしょう。
京人形の製造工程について
京人形は、上記でお伝えしたように各工程を職人がそれぞれ担当しています。
そのため、全ての工程が工芸品として高い価値を持ち、今もなおそのスタイルは変わらずに作られています。
京人形の簡単な製造方法と職人を下記にまとめました。
- 頭部製作(頭師)
- 髪付(髪付師)
- 手足製作(手足師)
- 小道具製作(小道具師)
- 雛人形着付け(胴着付師)
- 仕上げ・完成
京人形にとっても重要な頭部の制作は、頭師と呼ばれる職人が手がけます。
木彫りで頭の原型を作ることに始まり、日本画に利用する粉絵の具にて眉などを描くなど人形の顔を製造していく繊細な作業です。
また、髪付を行う髪付師は、黒く染めた生糸を使用して人形の髪の毛を繊細に再現していきます。
繊細な作業を繰り返し行い艶のある自然で美しい髪として生まれ変わらせます。
また、手足師が手足の政策を行い、京人形の種類に合わせた形で小道具師が小道具をしつらえます。
そして、雛人形着付けは胴着付師が行いますが、裁断から仕立て、着付けまでを担います。
和紙を金襴や友禅などの生地を利用するところが、京人形の特徴と言えるでしょう。
そして、最終的に全てを組み合わせた形で仕上げられます。
高い技術力を持ち合わせた職人たちが、それぞれの力を寄せ合い生み出される京人形。
日本が世界に誇る伝統工芸であることは間違いありません。
まとめ
京石工芸品、京人形ともに京都の歴史と文化が生み出した、ほかには類を見ない存在です。
数百年の歴史を持つ伝統工芸が受け継がれ続けられてきたことで、今もなおその当時の技術と文化が京都の街に息づきます。
京石工芸品、京人形を見る、または手に取る機会がある方は、ぜひ本記事でお伝えした素晴らしさを思い出してみてはいかがでしょうか。
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