京都では、数多くの工芸品が今もなお職人たちによって作られています。
京都の工芸品を日常生活に取り入れるだけで、生活がより豊かになるはずです。
本記事では、そんな京都の工芸品の中で、「京もの指定工芸品」に指定されている「京漆器」と「京指物(京の木工芸)」を紹介していきます。
ぜひ、これらを手に取ろうと考慮されていた方は、こちらを参考にしてみてください。
京漆器について
京漆器について下記の内容にまとめました。
- 京漆器とは?
- 京漆器の歴史
- 京漆器の製造工程について
それぞれ解説しましょう。
京漆器とは?
京漆器とは、その名が指し示すように京都で作られている漆器の総称です。
漆器自体は日本で幅広く作られていますが、京漆器の特徴は、「侘び寂び」を感じるさせる内面的な美しさだと考えられています。
茶の湯文化とともに発展をしてきた京都は、今もなお茶の湯文化の中心地として知られている場所です。
世界的にも日本的な文化を残し、さらに発展させ続けている貴重な場所である京都だからこそ、京漆器も広まっていったことは言うまでもありません。
京漆器は、ほか漆器と比較すると大変薄い作りであるところが特徴です。その薄さに高い品を感じるほか、その繊細さがわびさびといった雰囲気をより高めています。
さらに、米糊を使用しないといった特徴から漆の割合が多く、美しさと耐久性に優れた仕上がりになるところも魅力のひとつです。
漆が多い贅沢な作りであるほか、非常に工程も多く繊細な作業になることから高級品としても知られています。
京漆器というと器や箸といった食器類を想像させますが、祝儀調度品、箪笥、飾り棚をはじめ、炉縁、茶棚、祝膳など幅広いジャンルが製造されているため、一度は京漆器に触れたことがある方も多いかもしれません。
京漆器の歴史
京漆器の歴史は古く、794年以降に確立された歴史の古い漆器と言われています。
茶の湯文化とともに京漆器が広まり、室町時代にはすでに京漆器は栄え始めていたと言われているようです。
京漆器の特徴は美しく芸術的な蒔絵ですが、それが生まれたのは奈良時代といわれており、平安時代に蒔絵の新しい技法が生まれ京漆器もそれとともに発展していきます。
蒔絵のデザインは時代とともに変化していくことで知られていることから、京漆器のデザインからその時代背景が見えてくるといった面白さもあるようです。
安土桃山時代は豪華絢爛な武士好みのデザインが施されていましたが江戸時代の頃には華やかかつ緻密で繊細なデザインが流行ったといわれています。
京漆器の製造工程について
京漆器の製造工程は、非常に複雑であることで知られています。
それらを下記の内容にまとめました。
- 木地づくり
- 漆塗りの下地
- 漆塗りの下地研ぎ、中研ぎ
- 上塗り
- 節上げ
- 蝋色仕上げ
- 加飾
京漆器は、まずヒノキ、スギ、ケヤキなどの木材から木地をつくるところからスタートします。
京漆器で何を作るかによって、木地は変わってくるため重要な作業となります。
そして、京漆器の中でも工程がとくに多い漆塗の下地です。溝を掘り刻苧液と飛ばれる液を埋める刻苧が行われます。
木地固め、布着せ、地付け、くくり錆、錆付けといった細かい工程を行い下地が終わります。
そして、ざらついた質感をなめらかにするための下地研ぎ、そして中研ぎが行われ上塗りの工程です。吉野紙を濾し紙として使用し、「色漆塗り」や「透漆塗り」などの技法が用いられ仕上げられていきます。
そして、節上げと蝋色仕上げの工程が終わり、加飾です。
加飾は、京漆器に装飾を施す工程であり、蒔絵や螺鈿、青貝などの技法が用いられて京漆器が仕上げられていきます。
このデザインこそが京漆器の魅力であり、繊細かつ侘び寂びを感じさせるデザインが特徴です。
京指物(京の木工芸)について
京指物、京の木工芸について下記の内容にまとめました。
- 京指物とは?
- 京指物の歴史
- 京指物の製造工程について
それぞれ解説します。
京指物とは?
京指物とは、京の木工芸と呼ばれる木工芸のひとつです。
京都府で作られている木工芸であり、桐製品などを代表とする木工芸が中心とされています。
京指物の、「指物」とは木材同士を組み合わせて作られる調度品、家具などの総称であり、その技術によって数百種類を超える製品の製造が可能です。
京指物最大の特徴は、その優雅な存在感だと言われています。
平安時代を起源とする京指物だけに、その時代の宮廷文化の影響が色濃く受け継がれているところが特徴です。
一方で侘び寂びを感じせるようなシンプルで美しく無駄のないデザインのものも多く、さまざまな表情を持つところも京指物の特徴と言えるでしょう。
高い技術が伝承されてきていること、時代に合った技法とデザインで作られていることなど、今もなお京指物は高い人気を誇る調度品として愛されています。
京指物の歴史
日本は豊かな木材資源を持つ国としても知られており、数多くの木工芸が発達していったことで知られています。
その木工芸のひとつでもある京指物が始まったのは、上記でお伝えした通り平安時代頃と考えられているようです。
当時、大工職の人々によって宮廷の儀礼用の物差しが作られており、その頃に京指物の技術が確立していったと考えられるでしょう。
さらに、武家社会を中心とした室町時代に入ると、調度品への需要が増加することから専門の指物師などが増加していきます。
そして安土桃山時代に入ると、京都は茶の湯文化の中心地へ。
書院造りや座敷、茶華道具などにも指物が多く使われるようになったことから、京指物への需要が高まり栄えました。
町民文化となる江戸時代には、武家や商人、さらに歌舞伎役者の梨園指物などが作られるようになったことで、京指物は独自の技術を確立し、さらに発展を遂げていったのです。
現在でも、一般的な家具をはじめとした調度品はもちろん、ユニークなアイテムも京指物で作られるなど、まだまだ発展と挑戦を続けています。
京指物の製造工程について
京指物は、数多くの工程を経て製造されています。京指物の製造工程について下記の内容にまとめました。
- 荒木取
- 矯正
- 荒削り
- 寸法決め
- 組手加工
- 木釘づくり
- 組立
- 仕上削り
- 仕上加工
- 加飾
京指物の主役は木材であることから、荒木取の工程は大変重要です。京指物では、桐材、ヒノキ、けやき、松、杉などが多く使用されています。
長い時間をかけて乾燥させる必要があり、それらをさらに調度品に合わせて木取りをしていく工程です。
そして、ねじれなどが起こっている板を矯正する工程に入りますが、その加減は熟練の職人が手がけます。
その後、荒削りや寸法決め、そして組接といった高い技術を要する組手加工へ。木釘、組立、仕上削りなどを経た上で仕上げ加工が施されます。
京指物によって作られる家具、調度品の種類によっても変わってきますが、場合によってが蒔絵や別注の金具などが取り付けられる加飾の工程が加わることもあります。これら、複雑な工程と高い技術を経て仕上げられるのが京指物です。
使用する木材を長期乾燥するところから考えれば、膨大な時間を経て仕上げられていることがわかるのではないでしょうか。
さらに、それぞれの工程における熟練した職人の高い技術も京指物が高い品質を維持し続けている理由です。
世界からも注目されている指物だけに、日本人である我々もその魅力をより伝えていくべきではないでしょうか。
まとめ
京漆器、京指物ともに伝統と革新の融合が魅力的な伝統工芸品です。
時代に合わせて発展してきた技術や技法、京都の歴史とともに発展し続けてきたところなど、魅力が豊富な工芸品と言えます。
身近に生活に取り入れられる貴重な京都の伝統工芸品ですので、ぜひこれら工芸品を手に取ってみてはいかがでしょうか。
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