京都の伝統工芸品を知る(1)~西陣織~

美しき伝統工芸品「西陣織」!基本や歴史、魅力を解説!

京都には、数多くの伝統工芸や伝統食品が存在します。

その中には「京もの指定工芸品」、「京もの技術活用品」、「京もの伝統食品」など、条例に基づく指定を受けた京都を代表するものも少なくありません。

本記事では、京もの指定工芸品のひとつである、「西陣織」について紹介しています。

西陣織の基本について知りたいといった方は、ぜひこちらを参考にしてみてください。

西陣織の基本

着物に詳しくない方であっても、京都の「西陣織」について一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

西陣織は、京都はもちろん日本を代表する伝統工芸品として知られている紋織物です。

西陣織の基本について下記の内容にまとめました。

西陣織とは?

西陣織とは、京都の西陣で生産されている、多品種少量生産方式を基盤とした先染めの紋織物の総称です。

昭和51年2月26日付で国の伝統的工芸品に指定されており、「京もの指定工芸品」にも指定されています。西陣織最大の特徴は、その品種の多さです。

上記でお伝えしたように京都(西陣)は多品種少量生産方式を特徴としており、西陣織はその最たる例といっても過言ではないでしょう。

詳しくは後述しますが、爪掻本綴織(ツメカキホンツヅレオリ)や紹巴(ショウハ)、緯錦(ヨコニシキ) などの品種があり、国指定のものだけでも12種類存在しています。

西陣の織屋は長年培われてきた高い技術の錬磨、そしてデザイン創作のための努力を惜しまず、今もなお最先端の存在として君臨し続けているのです。

西陣織の歴史

西陣織の歴史は、古墳時代にまで遡ることができるといわれています。

5、6世紀頃に渡来人である秦氏の一族が現在の京都・太秦周辺に住み着き、養蚕と絹織物を伝えたことが西陣織の源流と言い伝えられているようです。

時代は流れ、平安京への遷都が行われた平安時代、国営の織物業が営まれていたといわれており、その時の織物の工人たちは現在の京都市上京区上長者町にて、「織部町」と呼ばれる町を形づくります。

宮廷文化を中心に発展してきた京都の絹織物業ですが、転機が訪れたのは京都で起こった応仁の乱(1467年~1477年)です。

応仁の乱は京都の街で東軍と西軍が争う戦で、多くの職人はその戦火から逃れるため住まいを去り織物業は衰退します。

しかし、戦乱が治まったことで再び職人は京都に戻り、もとの場所に近い白雲村や戦乱時の西陣の本陣「大宮今出川付近」で織物業を再開させることになりました。

じつは、この「西陣の本陣跡」で織物業を再開したことが、「西陣織」の名の由来です。

大宮に住む織物業者たちは大舎人座を復活させ、室町時代には京都の絹織物業を代表する存在とまで成長させたと言われています。

しかし、江戸時代以降、飢饉や幕府による奢侈(しゃし)禁止令、二度の大火などの影響で西陣の織物業は衰退の危機を迎えます。

しかし、明治時代に京都府からの派遣で佐倉常七ら3名が欧州に留学し、ジャカード織物などの技術を持ち帰り、西陣織に取り入れることで近代化に成功。

昭和時代には高度なデザインと技術によって高級織物業の代名詞となり、さらに大衆化への挑戦、着物以外の和装小物の材料用に使用するなど、幅広い製品として活用されるようになりました。

京都はもちろん、日本を代表する最高峰の織物業こそ、西陣織なのです。

西陣織が生み出されるまで

西陣織の魅力は、その芸術的なデザイン性と高い技術から生み出される緻密な織り技です。

西陣織は、非常に繊細な作業工程を経て生み出されていますが、その一部を順を追って紹介します。

西陣織ができあがるまでの工程を下記にまとめました。

    • 図案
    • 紋意匠図
    • 紋彫り
    • コンピュータグラフィックス
    • 撚糸
    • 糸染め
    • 糸繰り
    • 整経
    • 綜絖
    • 綴機
    • 手機
    • ビロードの線切り
    • 整理加工

    西陣織はざっくりとこれら工程を経た上で仕上げられています。どの工程も妥協は許されることはありませんが、とくに「図案」は西陣織にとって重要な工程といわれています。

    この図案こそが織物の顔となる部分であり、伝統的でありながらモダンな感覚を取り入れた現代的なものとして描かれていきます。

    また、現代では紋意匠図以降の工程をコンピューター化することがほとんどで、より繊細かつ複雑で正確な図面へと作成されていくようです。

    そして撚糸から始まる原料の準備工程ですが、図面同様に重要と言われている工程が、「糸染め」です。

    上記でお伝えしているように、西陣織の特徴は「先染め」になります。

    織元の指定通りの色合いに完璧に染めることが求められるため、非常に高い技術と経験を有する工程です。

    そして、必要な長さと本数の経糸を準備する工程「整経」ですが、西陣織ではなんと3,000本から8,000本という経糸が使用されています。

    この贅沢なつくりもまた、西陣織が高級織物として扱われるひとつの理由ではないでしょうか。

    そして、機準備工程を経たのちに製織工程に入りますが、西陣織でも重要な工程「綴機」に注目しましょう。

    独特の爪掻きで文様を表現していく織り方であり、西陣織の歴史的な手法のひとつといわれています。

    そして、手機や力織機、ビロードの線切り、整理加工などを経て西陣織ができあがります。

    多くの工程を専門の熟練した職人たちが手掛ける、伝統工芸品を超えた芸術品こそ西陣織の魅力と言えるのではないでしょうか。

    西陣織の品種について

    上記でもお伝えしているように、西陣織には数多くの品種が存在します。

    この品種の多さこそ西陣織の魅力であり、芸術的価値の高さと言えるのではないでしょうか。

    西陣織の品種を下記にまとめました。

    • 綴(つづれ)
    • 経錦(たてにしき)
    • 緯錦(ぬきにしき)
    • 緞子(どんす)
    • 朱珍(しゅちん)
    • 紹巴(しょうは)
    • 風通(ふうつう)
    • 綟り織(もじりおり)
    • 本しぼ織り(ほんしぼおり)
    • ビロード
    • 絣織(かすりおり)
    • 紬(つむぎ)

    それぞれ独特な風合いやデザインをした品種であり、歴史も大変古いものばかりです。

    中でも紀元前1580年頃、エジプト第17王朝期の時代にまで遡るという「綴(つづれ)」は、手の爪をノコギリの歯のようにギザギザに削った上で折り上げられる独特な品種として知られています。

    非常に繊細な技術が必要となることから複雑な紋様ともなれば、「1日1センチ四方」しか織れないこともあるそうです。

    これら品種をベースに素材、さらにデザインなどをモダンに取り入れるなどして全く新しい西陣織が生み出されています。

    京都が誇る伝統工芸品、「西陣織」の魅力は尽きることはないでしょう。

    まとめ

    古代にまで遡ることができる、京都を代表する西陣織。

    京都はもちろん、日本を代表する織物産業になるまで成長を遂げた誇るべき伝統工芸品です。

    近年、西陣織業界も厳しいと言われているものの、海外の有名ファッションブランドが西陣織を利用したり着物や帯など伝統的な和装とは違う、新しいアイテムに登用されるなどその可能性が広がり始めています。

    古い歴史と継承され続けられている高度な技術、そして何よりも見た人を虜にする美しい伝統工芸品は西陣織のほか存在しないと言っても過言ではないでしょう。

    ぜひ、京都らしさを体感できる西陣織の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

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