京都には、「京もの指定工芸品」や「京もの技術活用品」、「京もの伝統食品」などに指定されている工芸品が多数存在します。
本記事では、その中でも「京もの指定工芸品」に指定されている「京鹿の子絞」、「京友禅、京小紋」についてまとめました。
これら工芸品を通じて、京都の伝統産業について理解を深めてみましょう。
京鹿の子絞について
京鹿の子絞について下記の内容にまとめました。
・京鹿の子絞とは?
・京鹿の子絞の特徴
・京鹿の子絞の歴史
・京鹿の子絞の魅力
それぞれ解説します。
京鹿の子絞とは?
京鹿の子絞とは、衣装の模様を表現する絞り染めのひとつです。
鹿の子とは、仕上がった際にその模様が子鹿の斑点のように見えることから名付けらたもので、その技法は古来より伝わる伝統的なものとして継承され続けられています。
京鹿の子絞は、室町時代から江戸時代初期に京都で辻が花染として盛んに行われるようなったもので、現在では幅広い分野に用いられるようになりました。
京鹿の子絞の特徴
京鹿の子絞は、立体感のある表現が特徴と言われています。
疋田絞や一目絞と呼ばれる表現方法は大変緻密なものであり、括りによる独特の立体感こそ京鹿の子絞の特徴です。
京鹿の子絞は布地に下絵を描いた後、括り技法の技術者が絞り括り。
その後には、桶絞と呼ばれる多色染色を行い、帽子絞の染め分け防染によって染色を行い、乾燥させた後に糸を解いて湯のし幅出しをして完成させる複雑な工程を経ます。
数多くの工程を専門の職人が丁寧に手掛けることにより、あの美しい京鹿の子絞が仕上がるのです。
京鹿の子絞の歴史
京鹿の子絞は絞り染めのひとつですが、その源流となる発祥の地はインドといわれています。
日本国内においてもすでに7世紀頃には絞り染め自体の技術は伝わっていることで知られており、すでに日本書紀にも記載されていたほどです。
室町・桃山期に大流行した「辻が花染」は、その絞り染めを駆使したものであり、江戸時代に「鹿の子絞」、「京鹿の子」として広がり全盛期を迎えたとされています。
「辻が花染」である京鹿の子絞も江戸時代半ばに大流行し、その技術は今もなお京都の地に受け継がれ続けているのです。
京鹿の子絞の魅力
京鹿の子絞の魅力は、その美しさと人間が手仕事で生み出す贅沢さにあります。
京鹿の子絞の魅力を下記で解説していきましょう。
独特な風合いと美しさ
京鹿の子絞の魅力は、間違いなくその美しさです。
憧れの着物として知られている「総疋田絞」に代表される京鹿の子絞は、見る角度から人それぞれの曲線によってその表情を変化させる特徴を持ちます。
京鹿の子絞は、“布を苛める”ことで仕上げられると言われており、職人の手仕事によってその模様や風合いへと仕上がっていきます。
括られた時の凹凸は、「括り粒」という小さな隆起や「しわ」となり独特な風合いと陰影となるなど、全ての工程がその仕上がりを左右するほどです。
染めの美しさも京都の伝統工芸がもたらす魅力であり、京鹿の子絞は色や風合い、そして陰影全てが美しい最高峰の伝統工芸と言えるでしょう。
手仕事がもたらす贅沢
京鹿の子絞は、さまざまな工程を職人が手仕事で仕上げていく贅沢なものです。
「括り粒」で覆われる「総疋田絞」の独特な風合いは見事ですが、じつはこの「括り粒」は一つひとつ専門職人の手仕事で仕上げられています。
最高峰の贅沢品と称される「総疋田絞」の振袖になると、なんと20万粒という数の括りが作られるほど。
熟練された職人の手によってでも1日で多くて1,200粒括るのが最大と言われているため、振袖であれば1年半という月日をかけて仕上げられるといわれています。
さらに括りはじめから出来上がりまでは一人の職人が手がけることになっているため、健康状態にも注意しなければなりません。
大袈裟かもしれませんが、京鹿の子絞を駆使したひとつの反物が仕上がるまでに、数多くの人間の人生が注ぎ込まれているといっても過言ではないのです。
この贅沢こそ、京鹿の子絞の魅力と言えるのではないでしょうか。
京友禅・京小紋について

京都の伝統工芸の中でも知名度が高いのが、京友禅・京小紋です。
京友禅・京小紋について下記の内容にまとめました。
・京友禅・京小紋とは?
・京友禅・京小紋の歴史
・京友禅・京小紋の魅力
それぞれ解説します。
京友禅・京小紋とは?
京友禅・京小紋とは、ともに染めの技法のひとつです。
下記にてそれぞれ解説します。
京友禅とは?
京友禅とは、絵画調の模様をきものにあらわす染めの技術です。
隣あっている色が混ざらないよう、糸目糊を用いて防染して模様を描いていくといった高い技術が求められる京都が誇る伝統工芸として知られています。 現在でも模様染の代表として知られており、その美しい多色使いが魅力です。
京小紋とは?
京小紋とは、型紙を用いて京都で染められる小紋のことです。
京都の型友禅のことで。京小紋に対して江戸小紋なども存在しています。
型でしか表現できない柄や多彩な色使いが魅力です。
京友禅・京小紋の歴史
京友禅は、江戸時代までに編み出されていた染色法をもとに開発された染め技術です。
江戸期の元禄時代、京都・祇園あたりに住む扇に絵を描く扇絵師「宮崎友禅斎」によって始まるとされており、手描友禅によって確立されたものとして知られるようになりました。
そのため、京友禅の名は「宮崎友禅斎」が由来になったものです。
明治時代にはると色数の多い化学染料が輸入されたことから、広瀬治助によって「写し友禅」として型友禅が発明され、それを機に友禅が多くの人たちに広がっていったといわれています。
一方、京小紋は武士の裃に端を発した染め技術で、17世紀頃までには完成された技法です。
江戸時代の町人文化の中で大流行した小紋染めですが、京都では友禅と影響し合うことで京小紋として独自に発展してきた歴史があります。
また、京小紋の型紙自体は1,200年前にはすでに存在していたと言われています。 京友禅、京小紋それぞれ京都で独自に発展していった、まさに京都が誇る工芸品なのです。
京友禅・京小紋の魅力
京友禅・京小紋ともに、多色使いが魅力的な染め技術です。
とくに京友禅は多色使いの美しい華やかさが魅力であり、花鳥風月や金銀箔や刺繍などが用いられることが多い傾向です。
膨大な制作工程があり、染匠の指示のもと、職人たちが手仕事で仕上げていく贅沢さもまた魅力でしょう。
一方、京小紋は型紙によってさまざまなデザインが存在しており、そのはんなりとした優雅で京都らしい雰囲気が魅力といわれています。
色使いも気品あるものが多く、色使いも多いため使用する型紙も膨大になることがあるようです。
近年では、自由な発想のもとでモダンな図案なども増えている傾向で、ユニークな京小紋を見かけることもできます。
まとめ
「京もの指定工芸品」のひとつである京鹿の子絞や京友禅、京小紋は、京都が誇る素晴らしい伝統工芸です。
ぜひ、着物や和小物などを通じてこれら「京もの指定工芸品」の素晴らしさを体感してみてはいかがでしょうか。
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