京都には数多くの伝統工芸品が存在しています。
京都の工芸品はそれぞれ歴史がとても古く、今もなお職人たちにその技術が受け継がれ続けている特徴があります。
本記事では、「京もの指定工芸品」の中から京仏壇と京仏具についてまとめました。
京仏壇、京仏具の歴史や魅力を知りたい方は、ぜひこちらを参考にしてみてください。
京仏壇について
京仏壇について下記の内容にまとめました。
- 京仏壇とは?
- 京仏壇の歴史
- 京仏壇の制作工程について
それぞれ解説します。
京仏壇とは?
京仏壇とは、仏壇仏具のひとつで主に京都府京都市、亀岡市周辺で作られているものを指します。
京仏壇は40を超える職人たちが携わる高級品であり、一般家庭用ではなく、そのほとんどは寺院用に製造されているところが特徴です。
京仏壇の魅力は、細部に至るまで職人の技術が詰め込まれているところでしょう。
上記でお伝えしたように40を超える職人が、それぞれの工程を熟練の技で仕上げる共同作業であり、その緻密で美しい出来栄えは他仏壇仏具の群を抜いています。
京仏壇は日本のみならず世界的に高く評価されていることで知られており、今後も注目され続けられていくことは間違いないでしょう。
京仏壇の歴史
京仏壇の歴史は、歴史的な神社仏閣が数多く存在する京都の歴史と呼応するように発展し続けてきました。
仏教文化が伝来したと言われている飛鳥時代で、京都では奈良時代から平安時代にすでに仏具が作られていたそうです。
京仏壇の歴史が本格的に始まったと言われているのは11世紀頃の平安時代で、七条に仏工たちが集められたことが関連しています。
すでにその頃から高い技術によって作られており、多くの寺院用で扱われるようになりました。
その後、江戸時代のキリスト教の禁制の影響によって京仏壇はさらに広がりを見せます。各家庭が仏壇を設置する文化が広まることで京仏壇の需要も高まり、数多く生産されることになったのです。
上記でもお伝えしたように京仏壇の特徴は、その工程の多さにあります。
また、京仏壇はさまざまな宗派に合わせるように生産効率化を図った歴史があることから、このように作業が細分化されているようです。
これもまた、京仏壇が神社仏閣や数多くの宗派が集う京都だからこそのスタイルと言えるでしょう。
京仏壇は、高い技術力と伝統的な価値のある工芸品として認められており、1976年には、国の伝統工芸品にも指定されています。
京仏壇の制作工程について
京仏壇は、数多くの工程を経て作られている仏壇仏具です。
その大まかな制作工程を下記にまとめました。
- 木地工程
- 屋根工程
- 木彫刻工程
- 漆塗工程
- 蝋色工程
- 蒔絵工程
- 彩色工程
- 純金箔押工程
- 錺金具工程
京仏壇では、これら工程の中にも細分化された工程があるなど、大変複雑です。
さらに、それぞれの工程は専門の職人が担当しているなど、非常に贅沢な仏壇仏具であることもわかります。
例えば、最初の木地工程では乾燥させたヒノキや松素材を使って木地を作りますが、それぞれの宗派に合わせる必要があるため専門の木地師が担当しているほどです。
ほか、小さな部品を組み立てていく屋根師、宗派などによって変化する繊細な彫刻を施すのは彫刻師であり、非常に重要な工程としても知られています。
さらに京仏壇の美しい表情を生み出す漆塗の工程、京仏壇独特の工程として知られている蝋色と呼ばれる研磨作業なども熟練の職人でなければなし得ない工程でしょう。
蒔絵、彩色、純金箔押といった緻密な作業によって京仏壇に重厚感が加えられていきます。
最後は、仏壇の補強や戸の蝶番、装飾などで利用される錺金具の工程ですが、これもまた高い集中力と緻密な作業です。
京仏壇最大の魅力は、これら工程が専門の職人たちによって長い時間をかけて完成させられているといった、「人の手が生み出した芸術品」。
京都のみならず、日本が世界に誇るべき伝統工芸と言っても過言ではないでしょう。
京仏具について
次に京仏具について下記の内容にまとめました。
- 京仏具とは?
- 京仏具の歴史
- 京仏具の制作工程について
それぞれ解説します。
京仏具とは?
京仏具は、その名の通り京都で作られている仏具、また仏壇などのことです。
仏具は日本で数多く作られていますが、じつは国内寺院の8割以上の仏具の製造地が京都であることはあまり知られていません。
仏教と深い関わりがある京都は歴史ある神社仏閣が数多く点在していることも関連してか、仏具作りの技術が発展してきたと考えることができるでしょう。
京仏具を生み出すためには数多くの工程が存在しており、さらにそれぞれに専門の職人が手作業で仕上げていくといった特徴があります。
各時代の高級品として京仏具は存在してきた歴史があり、その多くが国宝・文化財に指定されているところも特徴でしょう。
京都の歴史と人が培ってきた、日本が誇るべき伝統工芸品が京仏具なのです。
京仏具の歴史について
仏教が伝来したとされる6世紀頃が、日本における仏具の歴史の始まりだと言われています。
一方、京仏具の歴史は8世紀頃、平安京が遷都された時代頃に始まったとされているようです。
京都は仏教の中心地として知られていますが、当時より各宗派の総本山が集ったことで仏具の需要が高まったと推測されます。
それぞれの宗派のための仏具の技術と伝統が京都を中心に発展していったことから、京仏具の歴史も発展していきました。
京仏具作りの歴史の根底には、平安時代中期頃に仏師の定朝が七条に仏所を設けたことが関連します。
仏師の定朝と、その一族、子弟などの仏工などが集い仏像の彫刻に励み続け技術を磨き続け、11世紀に頃に本格的に京仏具として生産が行われるようになったと言われているようです。
寺院をはじめ、武士階級向けの身分の高い方向けに仏具が生産されていたものの、江戸時代になるとキリスト教を禁じる寺請制度が設けられ、各家庭が仏壇を置くようになります。
一般家庭に仏壇が普及し始めると同時に京仏具の需要も増えていき、さらに京仏具は発展を遂げるようになったのです。
今もなお寺院用をはじめ家庭用の仏具には多くの京仏具が使用されているなど、日本人にとって京仏具はなくてはならない存在となったのです。
京仏具の歴史について
京仏具の制作工程は、非常に複雑かつ数多くの工程が存在します。
仏具はそれぞれ専門の職人たちが手がける分担性となっており、だからこそ叶う美しい仕上がりと重厚感が特徴です。
京仏具の制作工程について簡単に下記にまとめました。
- 木地工程
- 木彫刻工程
- 仏像彫刻工程
- 漆塗工程
- 蝋色工程
- 蒔絵工程
- 彩色工程
- 純金箔押工程
- 錺金具工程
- 金属工程
これら工程には、それぞれ専門の職人が担当します。
木地工程では、松やヒノキ、欅などを各宗派や各寺院の様式に基づき選び本体を作ります。
そして、各宗派によって定められている様式の彫刻を行う木彫刻工程はセンスと高い技術が求められます。
さらに、「一木造り」と「寄木造り」などの手法を用いる仏像彫刻工程。職人の長年の経験が成功の鍵を握ると言われている漆塗の工程、その漆を何度も磨き上げ鏡のような美しさに仕上げるための蝋色工程など、どれも高い専門技術と長年の経験、そして職人それぞれのセンスが問われる内容ばかりです。
そして、日本の漆工芸の極みとも称される蒔絵の工程をはじめ、金粉や顔料、岩絵具や泥絵具などを色付けする彩色は職人の独自性が強く出る工程といわれており、それもまた京仏具が評価されている特徴のひとつになっています。
純金箔押とは、1万分の1から2mmといった薄さの金箔を貼っていく作業で、天候にも左右されることから職人には長年の勘と技術が求められます。
そして仏具を飾る装飾金具を利用する錺金具工程、できあがった部品を全て組み合わせる最後の金属工程にて京仏具が完成します。
京仏具は全て手作業で行われるため、膨大な時間を有します。
これもまた、京仏具が世界で認められる存在であり続ける理由のひとつではないでしょうか。
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京仏壇、京仏具は、仏教の中心地として発展を続けてきた京都だからこそ生み出された伝統工芸品です。
今でも専門の職人が手作業で京仏壇、京仏具を生み出し続けており、技術の継承も行われています。
これから先、数百年、数千年といった月日が経過してもこの技術が失われることはないでしょう。
ぜひ、間近で京仏壇、京仏具を見る機会がある方は、その繊細で緻密な仕上がりの見事さを確認してみてはいかがでしょうか。
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