京都の伝統工芸品を知る(6)~京表具、京房ひも・撚ひも・丹後藤布~

京都には数多くの伝統工芸があります。

一方、どういったものがどういった特徴や歴史、さらにこだわりがあるのか知らないといった方も多いのではないでしょうか。

本記事では、京都の伝統工芸の中でも「京もの指定工芸品」に指定されている、「京表具」、「京房ひも・撚ひも」、「丹後藤布」を紹介していきましょう。

ぜひ、これら工芸品の特徴を掴んでみてください。

京表具について

京表具について下記の内容にまとめました。

  • 京表具とは?
  • 京表具の歴史
  • 京表具の製造工程について

それぞれ解説します。

京表具とは?

京表具は表具のひとつで、京都府内で作られている表具の総称です。

表具とは、書や絵画を布などで補強した上で装飾を施す技術であり、京表具はその中でも高い評価を得ている伝統工芸です。

京表具の歴史は古く、その中でも掛け軸や額装、屏風といった和室の装飾に利用されることが多い傾向です。

京表具はその高い技術と質の高い素材使いが特徴と言われています。

さらに茶の湯文化などの中心であったことから、美意識の高い人々たちによって育まれた洗練を極める美的センスなども魅力と言われています。

京表具は、今もなお活躍し続けており、京都のみならず日本全国の重要な文化財などを守り続けているのです。

京表具の歴史

京表具の歴史は平安時代にまで遡ることができるといわれています。

表具といった技術は仏教の伝来とともに伝えられており、書物は経巻、仏画像を礼拝するための掛け軸の源流になったものなどがすでに製造されていたそうです。

表装とも呼ばれる表具ですが、文化の中心地として栄えた京都とともに京表具も発展を遂げます。

寒暖祭が激しく湿度の高い京都特有の気候条件に合わせるよう、京表具も高い技術で発展を遂げていきました。

京表具の評価が高い理由に良い素材が調達できることもあり、それらにより京都の文化が守られてきたといっても過言ではないでしょう。

時代の流れで床の間ができたことで絵画が普及。さらに、室町時代には茶の湯文化が発展したこともあり、より京表具の需要が高まります。

中でも茶道文化の発展により洗練された京表具が生み出されるようになり、1997年には「伝統的工芸品」として認定されるようになります。

重要な美術品や古美術などの修復分野など、京表具は今もお京都の地で活躍を続けています。

京表具の製造工程について

京表具は、さまざまな種類によって製造工程が変わってきます。

一般的な京表具の製造工程を下記の内容にまとめました。

  • 裂地の取り合わせ
  • 裂地の肌裏打ち
  • 増裏打ち
  • 中縁増裏打ち
  • 付回し
  • 総裏打ち
  • 風帯付け
  • 仕上げ・完成
  • 検品

京表具の工程は高い技術力と経験を有するものばかりです。

まず、最初の工程である裂地の取り合わせから見ていきましょう。京表具では、本紙をはじめ、和紙や裂地、糊といった素材で仕立てが行われます。

加湿や乾燥を繰り返し、非常に複雑かつ丁寧な工程を経て仕上げられるところが特徴です。

裂地の取り合わせとは、本紙を引き立てるための裂地を洗濯する工程であり、数種類から裂地が選ばれます。

それらを選択する審美眼もまた、京表具を生み出す職人たちにかかっています。

そして、本紙や裂地に直接施す作業である繊細な肌裏打ちが行われ、2回目の裏打ちとなる増裏打ちなどが行われていきます。

その後、強度を増すための中縁増裏打ちや付回し、総裏打ちなどが行われますが、それぞれにあった素材を活用するなど熟練した技術と経験が求められる内容です。

そして、風帯付けを経て仕上げと完成、検品が行われ京表具として完成となります。

各工程の緻密さはもちろん、素材選びもまた職人の技術が必要となる、大変繊細な伝統工芸であることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

京房ひも・撚ひもについて

京都には、京房ひも・撚ひもと呼ばれる伝統工芸もあります。

その繊細な仕上がりと上品で洗練された風合いは、インテリアアートして飾っても遜色のないクオリティとして知られています。

京房ひも・撚ひもの歴史は、平安時代にまで遡ります。

当時の貴族階級の人々の室内調度品、また小物などの華やかな房飾りとしてすでに京房ひも・撚ひもが利用されていたそうです。

また、武士の時代になると武具甲冑をはじめ、刀の下げ緒にも京房ひも・撚ひもが活用されるなど、時代に合わせて発展していったという歴史があります。

また、室町時代から発展を始める茶の湯文化が広まる中、茶道具の飾りとしても京房ひも・撚ひもは活躍し、より洗練されたデザイン性で発展を遂げていくようになりました。

さらに仏教が中心となってくる江戸時代になると、各宗派の本山が集う京都において仏具のくみひもや飾り房などを扱う専門店が増加していきます。

時代の流れとともに京房ひも・撚ひもは洗練さを極めていく中、町民文化の隆盛と同時に日用品としても活用され広まっていったのです。

京房ひも・撚ひもの魅力は、さまざまな手法から美しい表情に仕上げられているところでしょう。

ほか京都の工芸品と同様に全てが手作業で行われており、全て均等に力をかけて糸が撚られることから、大変美しい姿になることで知られています。 今ではアパレルやアート作品として扱われることもあったり、1mを超える巨大な京房ひも・撚ひもなどが存在するなど、その多様性にも注目が集められているのです。

丹後藤布について

京都には、非常に美しい布である丹後藤布が存在します。

京都の伝統工芸として古い歴史を持つ布であり、その繊細かつ美しい風合いは多くの人々を今もなお魅了し続けています。

そもそも藤布とは、藤蔓の皮をはいで糸を作り織り上げたものであり、山に自生する藤蔓を活用するため歴史が大変古いことで知られています。

万葉集にも藤布が利用されていることが記されていることなどから、日本人にとっても非常に重要な布であったことがわかるでしょう。

藤布自体は日本最古の布などと称されており、丹後藤布もその歴史が古いことで有名です。

京都府の与謝野町を中心に、今もなお職人たちの手作業によってつくられている伝統工芸品で、まさに日本が誇るべき技といっても過言ではないでしょう。

丹後藤布の工程は、山に自生している藤蔓を切るフジキリと呼ばれるところから始まります。

素材を職人自らが入手するといったところも、丹後藤布の特徴と言えるでしょう。

そして、フジが乾かないうちに叩き皮から芯を取り出すフジヘギが行われます。

アクダキ、フジコキ、ノシイレ、フジウミ、ヨリカケ、ワクドリなど非常に細かい作業を手作業でじっくりと行っていきます。

タニオワセルなど特殊な工程を経て機織りが行われ、最終的に丹後藤布の完成となります。

まとめ

京都には、数多くの伝統工芸が今もなお職人たちの手によって守り続けられています。

数百年以上続く伝統的な技術、さらに洗練されたそのセンスなど、京都だからこそ発展してきた歴史がどの工芸品からも伝わります。

ぜひ、本記事で紹介した「京表具」、「京房ひも・撚ひも」、「丹後藤布」などを見かけた際は、その技術の細かさを感じ取ってみてはいかがでしょうか。

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