助産師

助産師は、その名のとおり「お産を助ける」助産行為の専門職です。妊娠から出産、育児に至るまで、母子の健康を支える役割があります。

出産をサポートし、赤ちゃんを取り上げるだけでなく、妊娠期や出産後の母体の健康指導をはじめ、乳房ケア、さらには新生児のケアなども担当します。

正常分娩であれば、医師の指示なく助産師の判断で助産介助が許される専門職なのです。

助産師の仕事

厚生労働省が発表した統計によると、平成30年時点で助産師のおよそ7割近くが病院で働いています。病院のほかに、診療所や助産所、保健所、都道府県や市区町村、そして教育機関などさまざまな機関で活躍できる仕事です。

病院に勤務する場合は、産科や産婦人科に配属されるのが基本ですが、診療科が複数ある混合病棟では複数の診療科を兼務するケースも少なくありません。

近年は産科医不足の影響から、助産外来や院内助産というスタイルで病院助産師が活躍する場が増えつつあります。

助産師の仕事内容は、大きく分けて「妊娠期」「分娩期」、そして「産褥期」の3つに分かれます。

  • 妊娠期

妊娠期における助産師の仕事は、生活や健康指導、そして母親学級や両親学級の産前教室などです。

妊娠中は、体調の変化が非常に起こりやすい時期です。妊娠中毒症や妊娠糖尿病などを放置すると、母体だけでなく赤ちゃんの命も危険に晒されてしまいます。妊婦健診で妊婦さんの健康状態をチェックし、少しでも異常があると判断した場合は、医師と連携を取りながら適切な処置や治療を施すのが助産師の重要な役割です。

母親学級では、食事に関する栄養指導やお産の流れ、母乳ケアや育児指導などを行ないます。また両親学級では助産師は、母親だけでなく、母親と一緒に子育てを行なう家族に対しても妊娠や出産に関する基礎知識や親になるための心構えを伝える役割があるのです。

  • 分娩期

出産時の助産師の役割は、正常分娩の介助を行なうことです。妊婦さんに出産の兆候が見られたら、すぐに出産準備に取りかかります。お産がスムーズに進むよう、リラックスできるような声かけや体をさするなどしながら、分娩介助を行ないます。

正常分娩のサポートだけでなく、分娩異常の早期発見も助産師の重要な役割の一つです。胎児の心拍や母体に異常などが見られたり、分娩の進行が遅かったりした場合は、速やかに医師と連携を取る必要があります。

  • 産褥期

産褥期とは、母体が回復するまでの6〜8週間の期間のことです。この期間は、母体の健康状態のチェックはもちろん、育児指導も行ないます。

育児指導のなかでも特に重要なのが、母乳ケアです。新生児への授乳方法や母乳がよく出るようなマッサージ方法を伝えます。出産してから1ヵ月後にある健診では、母子ともに異常がないかを確認しながら、悩みや困りごとの相談にのることも助産師の重要な仕事といえるでしょう。

助産師になるには?

助産師になるためには、以下の資格を取得する必要があるとともに、その他にも条件があります。

  • 看護師資格
  • 助産師資格
  • 女性

助産師になるためには、毎年2月に実施される「助産師国家試験」に合格をし、助産師資格を取得しなければなりません。

助産師の受験資格を得るためには、看護師資格を取得したうえで、以下の条件のいずれかを満たす必要があります。

  • 文部科学大臣の指定した学校で助産師課程を1年以上履修する
  • 厚生労働大臣が指定した助産師養成所を卒業する

さらに、現時点では女性であることも、日本国内で助産師として活躍するための絶対的な条件となっています。

助産師になるためのおもなルートは次の3つがあります。

  • 看護師・助産師の課程がある4年制大学に進学し、各国家試験をダブル受験する
  • 看護大学・短大・専門学校に通いながら、別々のタイミングで国家試験を受験する
  • 看護師として働きながら国家試験を受験する

学校を卒業してすぐに助産師として活躍したい場合は、看護師課程と助産師課程を有する4年制大学に進学し、ダブル受験しましょう。このルートは最短で助産師と看護師の国家試験を受験できますが、その分難易度も高い方法といえます。

しかしたとえ、助産師国家試験のみに合格した場合でも、合格実績の有効期限はないため、翌年以降に看護師国家試験に合格すれば問題ありません。

大学によっては助産師課程の人数を制限しているケースもありますので、どちらにしろ非常にハードルの高い方法であることを認識しておきましょう。

必要な資格

助産師になるためには「看護師資格」と「助産師資格」の取得が必要です。いずれも国家資格であり、大学や短大、専門学校や養成所を卒業したうえで、国家資格に合格しなければなりません。

看護師国家試験では、人体の構造と機能、基礎看護学など、10の試験科目から出題されます。筆記のみの試験で、医療従事者として働くために必要な科目が設定されているのが特徴です。

助産師国家試験では、基礎助産学や助産診断・技術学、地域母子保健および助産管理の3つの科目から構成されており、助産に関する知識に特化しています。出題科目が少ないため、比較的試験対策がしやすいのが特徴です。

看護師資格も助産師資格も、合格率が高い国家資格として知られています。看護師資格の合格率はおよそ90%、助産師の場合はおよそ99%と、ともに9割以上の合格率を誇ります。

それぞれの資格を取得するよりも、助産師学校や大学に入学する方が難しいケースもあるでしょう。

専門的な学校・学科はあるの?

助産師になるためには、おもに次の4つのどれかの学校に入学し、卒業しなければなりません。

  • 看護師課程や助産師課程を含む4年制大学
  • 4年制の看護大学
  • 3年制短期大学
  • 看護専門学校(3年制か4年制)

学費などの条件に問題がなければ、4年制大学や看護大学への進学をおすすめします。4年という長いスパンで一つひとつの学問を深い領域まで学べるため、自分の興味のある分野を選択することもできるからです。

大学院が併設されている看護大学に進学した場合は、大学で学んだ内容をより深く学ぶために大学院への進学も可能です。より深い知識や技術を習得することはもちろん、特定の分野について研究を行なうこともできるでしょう。

より短期間に学びたい方は、短期大学や看護専門学校への進学もおすすめです。即戦力を身につけて少しでも早く現場で活躍したい方にぴったりの進学先といえるでしょう。しかし、学校によっては助産師課程がない場合もあるため、十分注意して学校選びをする必要があります。

助産師の年収・給与・収入

助産師は一般的な職業と比較して、給与が高めに設定されているのも特徴です。

政府の統計である令和3年賃金構造基本統計調査によると、助産師、看護師、そして保健師の年収は次のとおりとなっています。

職種年収
助産師およそ550万円
看護師およそ500万円
保健師およそ480万円

助産師は、看護師にはできない助産行為を行なえることから、看護師よりも高い給与が設定されているケースがほとんどです。さらに、有効求人倍率も1.3倍以上であるため、常に需要のある仕事であることも大きなメリットといえるでしょう。

助産師の社会のニーズ・将来性・まとめ

少子高齢化や出生率の低下などが国の重要課題として取り上げられている現代において、助産師として活躍する場が限られてしまうのではないかと懸念する方も少なくないでしょう。

たしかに、お産の数自体は減少傾向にあるものの、助産師は今後も十分需要や将来性の期待できる仕事です。

産科医の不足を解消するために、助産師が担う役割も大きくなっています。病院によっては、助産師が妊婦健診を行なう助産師外来を設ける事例も増えています。医師とは異なり、助産師の方がリラックスした状態で相談しやすいというメリットもあるため、今後も助産師の需要は増えていくことが予想されるでしょう。

助産師は、お産を控える家族にとってとても大きな存在です。新しい命の誕生をともに喜び合えるのは助産師にとって大きなやりがいや魅力といえます。興味のある方は、ぜひ助産師を目指してみてはいかがでしょうか。

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