電車運転士・車掌

私たちの普段の生活に欠かすことのできない電車。電車の安全で快適な運行を支えるのが電車運転士・車掌の仕事です。

近年も新路線が開通するなど、電車を取り巻く環境は日々進化しており、安全で便利な鉄道環境はこれからも求められ続けるでしょう。それに伴い電車運転士・車掌の役割もますます重要なものとなるはずです。

また、電車運転士・車掌になるための進路も、従来の形から変化を遂げつつあります。以前は男性が多かった職業ですが、女性の運転士・車掌も増えてきました。

このように環境の変化が進んでいる電車運転士・車掌の仕事内容や、就職するための方向性はどのようなものでしょうか。近年の状況も俯瞰しながら、詳しく見ていきましょう。

電車運転士・車掌の仕事

乗客の立場から見ていると、電車運転士が運転する電車は一般的な乗客を乗せる旅客車ばかりに感じますが、実際には貨物列車も運転の対象となります。いずれの電車も、乗客、貨物を目的地まで安全に運ぶことが主要な業務です。

電車運転士は運転前、所属乗務区にて助役より点呼を受け、健康状態を確認後、車両の安全点検を実施し乗務に就きます。

電車運転中は各駅への予定到着時刻・発車時刻どおりに運行することを意識し運転を行ないます。運行地域や路線に違いはありますが、踏切や信号のほか、運行に関わるさまざまな点に気を配りつつ車両を制御し、万一事故が発生した場合は、乗客の安全確保や事故対応を車掌とともに行ないます。

規定時間どおり運転を行ない、次の運転士へ交替し、1日の運行終了時は車両を車庫入れします。最後に当日の運転状況を記録し、業務を終える流れです。電車の運転が中心業務ではありますが、乗客の安全には車掌と連携して、細心の注意を払う必要があります。

車掌の仕事は運転士同様、乗客を目的地まで安全に運ぶことですが、特に乗客の安全確認や安全確保を念頭に、電車の運行を指揮する役割を担います。

電車の運行状況を逐一チェックし、場内アナウンスで乗客へ必要な事柄を伝えます。停車駅の案内や予定到着時刻、乗客への注意喚起や協力してほしいことなど、車掌は電車が安全に、快適に運行するよう状況をコントロールするのが仕事です。

駅に到着時は電車の停止位置を確認し、問題がなければ扉の開閉を実施します。発車時も電車、乗客に異常がないことを確認し、電車内外の安全を守ります。

異常時には乗客の安全を最優先に、事故対応、他の乗客への案内や状況説明を行ない、急病人の対応や、安全を妨げる事象がないかを常に監視し、安全に運行が完了するまで、電車全体に気を配るのです。

そのほか、空調などの車内環境の正常化や、切符の確認、乗客の質問への対応など、車掌の業務は電車の運行すべてに関わるものです。電車の運行全体の安全性を確認しながら、目の前の突発的な事象にも対応が必要になるなど、臨機応変な判断力、対応力が求められ、その職務内容は多岐にわたります。

電車運転士・車掌になるには?

電車運転士になるには鉄道会社に就職しなければいけませんが、就職後もすぐに運転士になれるわけではありません。はじめは数年間駅員としての業務に就き、駅での乗客への対応や、電車の安全な運行にまつわる諸業務にて経験を積みます。

車掌などの業務も重ねたのち、国家試験である「動力車操縦者免許試験」を受験、合格し、運転士の免許を取得することができます。

車掌も鉄道会社入社後、すぐに業務を任せられるわけではなく、窓口業務や駅での乗客対応を数年間経験したのち、車掌の登用試験を受ける流れが一般的です。

いずれも若い頃からの現場経験がキャリアにおいて重要なため、工業高校や商業高校卒業後すぐに鉄道会社へ就職する場合が多いです。ただし近年は鉄道関連の専門学校や4年制大学卒業後、鉄道業務に従事するケースも見られます。

なお、電車の運転士となったあとも本人の適性や希望を受け、車掌業務を担う場合もあり、業務内容は固定的ではありません。

必要な資格

電車運転士になるには、駅員業務、窓口業務、車掌などを経験したのちに国家資格である「動力車操縦者免許」の取得が必須になります。なお、「動力車操縦者免許」の受験資格を得るには、4ヵ月間ほどの学科講習と5ヵ月間ほどの技能講習の受講が必要です。

動力車操縦者免許試験の内容は技能試験に加え、筆記試験、身体検査、適性検査を含みます。また、免許にも複数の種類があり、保有資格によって運転できる電車の種類が変わります。

いっぽう、車掌になるには特定の資格は必要ありません。高卒以上で、駅員業務などの経験を積んでいれば、車掌を務めることは可能です。とはいえ、車掌業務にはあらゆる知識、判断能力が要求されるため、多くのスキルが必要であることはいうまでもありません。

<h4>専門的な学校・学科はあるの?<h4>

電車運転士になるためには、鉄道各社の鉄道現業職採用試験に合格する必要があります。ただしこの業務は広く公募されるものではなく、過去採用経験のある高校にのみ求人が来る場合が多いです。

そのため、過去に鉄道会社への就職実績がある高校へ進学することが、電車運転士になるための現実的なルートであり、車掌を目指す場合も同様です。

4年制大学を卒業後も、鉄道会社への就職の道はありますが、その場合車掌や運転士といった現業職ではなく、本社勤務などの総合職であるケースが多いです。ただし近年では、大学卒業後の就職でも、現業職の道を歩む人もあり、今後もその傾向は加速するでしょう。

電車運転士・車掌の年収・給与・収入

電車運転士の収入は、一般的なサラリーマンの平均よりはやや高い傾向が見られます。その年収は490万円〜640万円ほどとなっていますが、鉄道会社によって差があります。JRや大手私鉄会社は給与が高めである一方、地方の私鉄はそこまで至らないケースが多いです。

ただし、鉄道会社での勤続年数や役職の変動によって給料は上がる傾向が見られ、新幹線などの特別な電車の運転士は乗務手当として、さらに給与が増える傾向にあります。

車掌の収入は、運転士と比べると少ない傾向にあります。年収は380万円〜580万円ほどとされており、これは一般的なサラリーマンと比べても平均的といえるでしょう。もちろん、この場合も、鉄道会社の規模や、勤続年数、役職によって差は生じます。

給与面だけ見ると、運転士の方が高い傾向にあるため、車掌から運転士を目指すケースはよく見られますが、必ずしも車掌を務めた人全員が運転士を目指すわけでなく、そこには適性や本人の意向が大いに関係してきます。

電車運転士・車掌の社会のニーズ・将来性・まとめ

テレワークや在宅勤務などが一般化した現代でも、電車の乗客は減ることなく、ビジネス、旅行等さまざまな用途で、今後も電車は利用され続けるでしょう。また、近年は環境保全の観点などからも電車の需要は高まっており、新路線の開通なども進んできています。

ただし地方の鉄道会社などは、乗客数の減少によりコストカットをやむなくされるなど、安泰でない状況も垣間見られます。鉄道にまつわる業務の改変やオートメーション化はさまざまな場面で進んでおり、その状況は今後も加速することが予想されます。

とはいえ人の安全を守る業務としての電車運転士・車掌のニーズがなくなることはないでしょう。

従来は、就職への進路が、指定の工業高校、商業高校卒業後、現業職に従事するというパターンが一般的でしたが、近年ではその傾向もだんだんと薄れ、4年制大学卒業後に車掌・運転士の道を歩む人や、女性の就業も多くなってきました。

鉄道会社も多くのサービスと連携するなど、今後もさまざまな方向性へ進化を遂げることが予想されます。

鉄道を取り巻く状況や、職務環境の変化に伴い、求められる業務・スキルが変わることは想定されるものの、電車運転士・車掌の「人と電車の安全な運行を守る」業務はこれからも求められ続けるでしょう。

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