保育士

保育士は保育所などの児童施設で、0歳から18歳未満の子どもの生活全般のお世話をする仕事です。なかには、乳児院や母子生活支援施設、児童養護施設や知的障害施設などで働く人もいます。

この記事では、0歳から6歳の未就学児を対象にした保育士の仕事について、なり方や必要な資格、通うべき学校や給与などについてご紹介します。

保育士の仕事

保育園などで働く保育士は、0歳から6歳までの子どもの年齢に応じた生活全般の指導をするのが仕事です。

「着替えや食事」「トイレやお昼寝」「絵本の読み聞かせやお友だちとの遊び」「運動会などの行事」を通して、子どもが成長するうえで必要な社会生活のルールを伝えていきます。

また、保護者との会話も必要です。

園での子どもの様子を細かく伝えることで、保護者に安心してもらうためです。

「一生懸命取り組んでいたこと」「楽しかったこと」、ときには、お友だちとのちょっとしたトラブルや怪我なども報告します。

保育士に向いている人は、「子どもが好きな人」があげられます。

子どもが嫌いでは務まらないからです。

また、人とのコミュニケーションを苦にしない人も向いています。

子どもだけでなく、保護者や職員同士、地域の人との関わりが大切になるからです。

子どもの行動をじっくりと愛情を持って見守る忍耐力や包容力、子どもと遊ぶための体力がある人も向いているといえるでしょう。

保育士のやりがいは、日々変化する子どもの成長が感じられることです。

例えば苦手な野菜を少しでも食べられるようになったり、一人で行けなかったトイレに行けるようになるなどです。

保護者から「先生のおかげでこんなことができるようになった」と感謝の言葉をもらったときは、何ものにも代えがたい喜びを感じられます。

保育士になるには?

保育士になる方法は、2つあります。

1つめは厚生労働省に指定された大学・短大・専門学校の課程を卒業する方法です。

大学ならば、社会福祉系学部および生活科学系学部などにある「児童学科」「幼児教育学科」「子ども学科」、短大ならば、保育科・幼児教育科、専門学校ならば保育士養成所などがあります。

これらの学校を卒業すれば無試験で保育士資格を取得することが可能です。

2つめは、全国保育士養成協議会で行なう保育士試験を受け、合格する方法があります。

受験資格のある人は「大学に2年以上在籍、62単位以上を履修した人」、「短大卒」「専門学校卒」「高校卒業後に児童福祉施設で2年以上・2880時間以上働いている人」などです。

試験は、前・後期2回の筆記試験、実技試験からなります。

6割以上の得点者が合格となり、近年の合格率は20%前後です。

なお、試験に合格したら、各都道府県に保育士登録をして保育士証を受け取る必要があります。

詳細は、協議会や各都道府県のホームページなどで調べてみましょう。

必要な資格

保育士になるために必要な資格はおもに3つあります。

保育士試験のほか2つはぜひ取っておいたほうが良い資格です。

ここでは、その主な資格を紹介します。

①保育士試験

全国保育士養成協議会が行なう、保育士に必要な国家資格です。

筆記試験と実技試験があります。

筆記試験は、「保育原理」「教育原理」「保育の心理学」など9科目から出題されます。

また、実技試験は、「課題曲の歌と演奏(音楽に関する技術)」「絵画表現(造形に関する技術)」「子どもの前で話す想定でお話(言語に関する技術)」などです。

筆記試験の全9科目すべてで6割以上の点数を取らなければ、実技試験を受けられないので大変難しい試験です。

ただし、筆記試験で合格した科目は、3年を期限に試験が免除されるので、再受験する際には苦手な科目を重点的に勉強して合格を目指しましょう。

受験料は、1万2,950円です。

②絵本専門士

国立青少年教育振興機構が設立した資格で、絵本の魅力を伝える絵本の専門家です。

1コマあたり90分から120分の授業を30コマ受け、修了課題により認定されることで「絵本専門士」として認定されます。

受講料は、約8万円ほどです。

③幼稚園教諭免許

文部科学省の定める条件に該当する保育士として3年以上勤務した人を対象にした、幼稚園教諭になるための資格です。

試験内容は、教科および教職に関する2つの科目と幼稚園教育の実践に関する科目の3つからなる筆記試験となります。

受験料は2万円です。

資格を取ることで、保育園だけでなく幼稚園でも働けるようになるため、キャリアの選択肢が広がります。

専門的な学校・学科はあるの?

保育士になるための学校や学科を、大学・短大・専門学校のそれぞれから説明します。

4年制の大学は例えば、保育児童学科やこども学科などです。

授業を通して、子どもに関する専門知識や保育技術を学んでいきます。

学びだけでなく、実際にボランティアなどを通して地域の子どもたちと関わる授業もあるのが特徴です。数週間の保育所や幼稚園での実習もあります。

ある大学では、保育士の学習のほか、幼稚園教諭として働く知識や児童相談所や児童福祉施設などで働く知識を学べる学科もあります。

学費は4年間で約400万円ほどです。

短大なら、幼児保育科や児童学科などがあります。

大学と同じく子どもに関する専門知識を学んだり、保育所や幼稚園での数週間の実習をしたりします。

ある短大では、授業のあとにできる保育園・幼稚園でのアルバイトを紹介してくれるところもあるようです。

学費は約250万円ほどです。

専門学校では、より実践的なカリキュラムを学ぶことができます。

例えばある専門学校では、実際に園で使う教材を使って図画工作授業を行ないます。

なかには実習先の保育園や幼稚園が専門学校と提携しているところもあるため、就職先が見つかりやすいでしょう。

学費は、約200万円ほどです。

保育士の年収・給与・収入

保育士の収入は年収で、約320万円ほどです。月収に直すと、約27万円ほどになります。初任給は、20万円前後のところが多いようです。

施設や地域によってはもっと低いところもあるので、給与面では厳しい傾向にあります。

そんななか2022年の2月から国の施策「保育士・幼稚園教諭等処遇改善臨時特例事業」により、保育士の収入に月額9,000円の補助がされています。

とはいえ、「複数の子どものお世話」「保護者の対応」「休日の少なさ」「肉体労働」など保育士の仕事量に見合うだけの収入にはまだまだほど遠いのが現状です。

ただ、主任やリーダーになると平均で月収約40万円ほどになるケースもあるので、まずはその園で頑張り収入を上げる努力をしましょう。

面接の際には、給与がどれだけ上がっていくのかを具体的に確認しておくことも必要です。

保育士の社会のニーズ・将来性・まとめ

保育士はこれからもなくてはならない職業のひとつです。

出産してからも仕事を続けたい女性やシングルマザーで働かざるを得ない女性が増えるなか、保育所を利用するケースが多いからです。

近年、保育所の不足が問題となっていますが、通常の保育所のほかにも、保育園と幼稚園の両方の機能を持つ「認定保育園」の普及が進められ、保育所は増える傾向にあります。

それにあわせて、保育士も必要とされています。

しかし、激務の割には給与が少ないこともあり、「保育士のなり手不足」が叫ばれています。

たまに人員不足による保育士の児童虐待のニュースが取り上げられていますが、そのような状況は避けなければなりません。

保育士の待遇の改善はまだまだ進んでいない現状がありますが、社会全体で考えなければいけない問題です。

マイナス面を補うことにより保育士が安心して働けるようになれば、多くの優秀な人材を確保できます。

その結果、保育所に預けることが子どもにも親にもプラスになっていくのです。

保育士は大変ななかにもやりがいのある、大切な仕事といえるでしょう。

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