アンティーク家具修復・販売の仕事
「アンティーク家具」とは、製造されてから100年以上経過した家具のことをいいます。アンティーク家具修復師のおもな仕事は、そのような家具の修復です。
具体的には、扉や戸の建て付けを良くする作業、染みこんだ汚れを落とす作業、家具の色味を元の状態に合わせる着色作業などがあります。
仕入れたアンティーク家具を大幅にリメイクしたり、古材として再利用したりと、商品ごとに最適な状態にして販売するのも仕事です。
アンティーク家具修復師の仕事のやりがいの一つは、自分が修理した家具をお客様に見て喜んでもらえるところです。基本的に一人ですべての作業工程を担当するため、ものづくりの醍醐味を味わえるのもやりがいとなります。
アンティーク家具修復師の仕事に向いている人の特徴は、5つあります。
①アンティーク家具に興味があること
アンティーク家具修復師に向いている人の第一の条件は、アンティーク家具が好きなことです。アンティーク家具には、ずっと使い続けられてきたことによるたたずまいの美しさや、ほかの家具にはない特殊なづくり、繊細な彫刻の魅力があります。その魅力に興味を持ち、技術力を高め続けることが求められるでしょう。
②手先が器用なこと
アンティーク家具修復師は機械工具や刃物を使って緻密な作業を行なうため、手先の器用さも大切です。小さな頃から細かな材料を使って何かモノをつくることが好きだったなら、楽しんで取り組めるでしょう。
③忍耐力・丁寧な姿勢
一人前のアンティーク家具修復師になるために、最初のうちは先輩の指示を受けながら地道に学び続ける忍耐力が必要です。はじめは覚えることが多くて心が折れそうになるかもしれませんが、そのような状況でもへこたれない人は向いています。
また、アンティーク家具の修復には、商品の状態に合わせてじっくりと作業する丁寧な姿勢も求められます。
④体力
アンティーク家具は、通常の家具より重いものが多いです。特に海外製の家具は日本のものよりサイズが大きいことが多いため、商品を持ち運ぶ際に力が必要となります。
女性でアンティーク家具修復師の仕事に就くならば、筋トレなどで体を鍛えておくのがおすすめです。就職試験を受ける際には、「女性でもできるのか」を事前に確認しておきましょう。ペイントやワックスがけなどの軽作業もあるので、まずはそうした仕事を入り口としてアンティーク家具修復師の仕事をスタートするのも一つの方法です。
⑤柔軟な対応力
アンティーク家具は、ほとんどが一点ものしかない商品です。そのため、アンティーク修復師は、その都度「この家具はどのような修復をするのがいいのか?」と常に頭を使いながら、柔軟に対応する能力が求められます。黙々と手を動かすだけがアンティーク家具修復師の仕事ではないのです。
アンティーク家具修復・販売になるには?
アンティーク家具修復師の仕事に就くには、制作会社や制作工房に就職する方法があります。
求人は大手の就職サイトでは募集していない場合があるので、気になる制作会社や製作工房の公式サイトで調べます。自分に興味のあるアンティーク家具の修復作業ができるかをチェックし、興味があるなら一度問い合わせてみるとよいでしょう。
もし、求人募集していなくても諦めることはありません。問い合わせフォームから今後の採用予定を問い合わせるか、直接電話して確認する積極性が大事です。もし採用の予定がなくても、見学させてもらえるなら今後の活動に役立つはずです。
また、家具の展示会やアンティーク家具展に直接足を運んで、担当者に話を聞いてみることもおすすめします。採用に関するなんらかの情報を得られるかもしれません。
就職試験は、他の企業と同じように採用試験を行なうところがほとんどです。面接では「自分がその仕事をしたいと思う動機」「企業の方針や技術力で共感できるところ」「魅力を感じたこと」を言えるよう、前もって準備しておく必要があります。
必要な資格
アンティーク家具修復師になるための資格は特に必要ありませんが、車で家具を運ぶこともあるため、運転免許は取得しておいた方がよいでしょう。
また、アンティーク家具修復師として経験を積んでから、取っておくと役立つ資格があります。具体的には次の2つです。
①家具製作技能士
職業能力開発協会が実施する国家資格です。1級から3級まであり、それぞれ家具の一般知識や製図に関する知識を求められる学科試験、製作図をもとに実際に作品をつくる実技試験があります。合格すると「家具製作技能士」の称号が与えられます。
1級の受験資格は7年以上の実務経験または、2級合格後2年以上の実務経験が必要です。2級は、実務経験2年以上が必要となります。3級は新たに追加された級で、高校・大学・専門学校などで職種に関する学科に在籍または卒業した人に受験資格があり、合格すると実務経験なしで2級の受験が可能です。高校卒業後、家具修復に関する学校に進学する人は積極的に受けておくことをおすすめします。
②木材加工用機械作業主任者
東京労働基準協会連合会が実施する国家資格です。アンティーク家具を製作する企業や工房では、木材加工用機械を使う場面があります。その際、危険のないよう監督する責任者を付けることが義務づけられています。それが「木材加工用機械作業主任者」です。
受験資格は18歳以上で、木工機械を使った作業を3年以上行なった経験がある人です。技能講習を受講後、修了試験に合格すると「労働安全衛生法による技能講習修了証」が交付されます。将来、アンティーク家具修復師として独立を考えるなら資格を取りましょう。
③海外の家具職人資格
海外の国家資格を取得する方法もあります。ドイツでは「ゲゼレ資格」「マイスター資格」、スウェーデンなら「イェセル」資格などです。海外の職人養成プログラムに3〜4年参加して学びながら現地の企業で働き、資格取得を目指します。
例えばドイツの国家資格を取得するなら、「ゲゼレ・マイスター留学」というプログラムに応募して参加する方法があります。参加するには、履歴書や応募理由の提出が必須です。そして、厳しい基準を満たして合格した人のみが参加できます。語学力も求められるので、勉強しておくことも必要です。
また、研修中は手当が出るものの、留学費用は300〜350万円ほどかかるので、留学資金も用意しなければなりません。
専門的な学校・学科はあるの?
アンティーク家具修復師の仕事は、実際に仕事を経験しながら技術を身につけられるものの、まったくの未経験だと経験者よりも不利です。
しかし、大学や短大・専門学校や職業訓練校で専門的な勉強をしてから就職試験に挑めば、恐れることはありません。学校に通うことにより、アンティーク家具メーカーや制作工房からくる求人案内を紹介してもらえる可能性も高いでしょう。
例えば、大学・短大ならば、プロダクトデザインを学べる学科やコースなどです。専門学校のなかには、実際に家具制作の制作実習を行なえる学校もあります。職業訓練校では、実践的な家具の製作を通して、設計図の読み方や描き方、木材の塗装や木工機械の取り扱い方などを学べます。
アンティーク家具修復・販売の年収・給与・収入
アンティーク家具修復師の平均月収は企業規模や取扱商品によって変わってきますが、約15万円から40万円ほどです。年収で計算すると、180万円から480万円ほどになります。
規模の小さい作業所は月収が安めの傾向にあるため、高収入を得たいならば、キャリアアップして規模の大きい企業に転職するか、独立する必要があります。ただし、独立する場合は、収入が安定しない時もあるため、経営的なスキルも必要です。
アンティーク家具修復・販売の社会のニーズ・将来性・まとめ
現代は、大量生産・大量消費の世の中です。それは、家具業界も同様の傾向となっています。
しかし、安価な家具を求めるユーザーばかりではありません。「自分が長年使ってきたアンティーク家具をこれからも大切に使い続けたい人」「使い捨てではない家具を求める人」のニーズはあります。
アンティーク家具修復師には、そのようなユーザーニーズに応えられる確かな技術力が求められています。また、長く活躍し続けるためには、技術力だけではなく他にはない独自の価値を生み出すアイデアをつくり出すことも重要です。
時代が変わってもアンティーク家具修復師は、これからも求め続けられるでしょう。
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